そのオジサンにラヴィが近付き、元気よく声を掛ける。

「おとーん! ウチの未来の旦那様を連れて来たで!」

 ……って、今ラヴィはなんて言った!? とりあえず、お父さんへ俺の紹介の仕方がおかしくない!? 将来の旦那様って……本気で餌付けされてない!?

「……ラヴィ。確か、街で一人前の魔法使いになると言って家を飛び出たはずだが……未来の旦那とは、どういう意味だ?」

「そのまんまの意味やでー! ウチはカイ先生と結婚するねん!」

「ほぅ……その少年は、一体何の先生なんだろうな」

 待って! 話し方こそ穏やかだけど、お父さんの血管が切れそうになっているから!

 めちゃくちゃ怒っているってば!

「あんな、カイ先生はめっちゃすごいねん! ウチの知らんことを沢山教えてくれて、ウチはもうカイ先生がおらんと満足出来へん身体にされてもーたから……ウチは、カイ先生と結婚しようと思うねん!」

「ほほぅ。まだ十代半ばのうちの娘に、君は一体何を教えてくれたのかね?」

「ご飯です! 美味しいご飯の作り方を教えたんですっ!」

 ラヴィのお父さんが立ち上がって、俺のところへ向かって来た所で、さすがに口出しさせてもらうことにした。

 木の傍で精霊たちと暮らしていたらラヴィが来たこととか、一緒に鳥を捕まえて俺の知っている料理を振舞ったこととか。

 あと、魔法使いを目指しているラヴィに魔法を教えていることや、料理で精霊石の力を使い切ってしまったことなど、ここへ来た事情を必死で説明する。

「なるほど……すまないね。冷静に考えてみれば、ラヴィよりも幼い少年が、変なことをするわけがないか」

「あはは。俺……じゃなくて、僕は料理のことしかわからないですよー」

 とりあえず、ラヴィの説明が誤解を招いたと納得してくれたようで、お父さんの表情が穏やかになった。

 ラヴィがあの鳥料理を気に入ったのはわかったけど、もう少し言い方を何とかして欲しいところだ。

「カイ先生、謙遜したらあかんってー。料理もすごいけど、魔法もすごいやん。水の精霊の力を使って、一緒に水浴びしてるやろ? あんなん普通出来へんって」

「……一緒に水浴び?」

「せやでー。川も泉も無い場所やのに、木の箱に水を注いで、毎晩水浴びするねん。木の箱が狭くて、くっつかな一緒に入られへんねんけど、それでもあの水の量を毎日出せるのはすごいと思うねん」

「へぇ……カイ君は毎晩うちの娘とくっついて、一緒に水浴びをしていると」

 とりあえず、ラヴィは少し黙ってくれぇぇぇっ!


 改めてラヴィのお父さんの誤解を解き……いやまぁ一緒に水浴びしていることは本当なんだけど、やましい気持ちは一切無いと説明して、本題へ。

「ラヴィ。それより、精霊石の力を回復してもらうんだよね?」