以前は、何処かへ行くと言ったら、薬草を持たされたけど、今回もちゃんと考えてくれていたのか。
リアの心遣いを嬉しく思いながら、服が乾いていたので、ラヴィと共に着替えて、再び歩き出す。
途中で何度か魔物に遭遇することがあったものの、ディーネたちの力で追い払い、陽が傾き始めたところで、荒れ地に小さな穴が現れた。
「カイ先生。ここがウチの村の入り口やで。狭いから気を付けて入ってきてな」
ラヴィが村の入り口だと言った穴は、人が何とか入れるような小さな穴だし、看板もなにもない。
これは、教えてもらわなければ、村の入り口だとは、到底思えないな。
そんなことを考えていると、ラヴィが頭から穴の中へ入って行く。
一体、中がどうなっているのか覗いてみると、どうやら滑り台みたいに、坂になっているようだ。
とはいえ、普通に土なので全然滑らないうえに、高さもないため、自分で這って進まないといけないけど。
一瞬、メルに金属の板とかを出してもらえば、まさしく滑り台みたいにスーッと降りられる気もしたけど、この村の住人たちに迷惑がかかりそうなので、頑張って進むことに。
「カイ先生。その辺りからは立っても大丈夫やで」
結構大変だったけど、数メートルくらい下ったところでラヴィが声をかけてきた。
「本当だ。入り口以外は結構広いんだね。それに、明かりもあるし」
「壁に光苔が生えてるからやで。それのおかげで、外みたい……とは言わんけど、そこそこ明るいねん」
ラヴィに言われ、立ち上がって周囲を見渡すと、幅二メートルくらいの通路が奥まで続き、所々が十字路になっている。
ラヴィによると、十字路の先は個人の家なので、勝手に入らないように……と言われたんだけど、この陽が届かない薄暗さといい、あまり高くない天井といい、ラヴィの村を見ていると、前世の頃に住んでいたマンションの通路が浮かんできた。さすがに光る苔はなかったけど。
この苔がどういう仕組みなのかはわからないけれど、まぁ日本でも蛍が光ったりするわけだし、同じような感じなのだろう……たぶん。
「カイ先生。こっちやで」
「確か村長さんが祈祷師で、精霊石に精霊の力を込められるんだっけ?」
「せやでー……あ、こっちこっち。ここが村長の家で、ウチの実家でもあるねん。まぁウチも帰って来たんは久しぶりやねんけどな」
ラヴィに連れられ、所々に横穴のある通路を一番奥まで進むと、右手の横穴へ。
ラヴィの実家に村長がいるということは、お父さんかお爺さんが村長さんなのかな?
横穴へ入って奥へ進むと、中は結構広い空間で、まず八畳くらいの部屋があって、更に奥の部屋へと続いているようだ。
その最初の部屋に四人掛けのテーブルと椅子があり、ラヴィよりも遥かに身体が大きい、筋肉粒々で兎耳のオジサンが何か作業をしていた。