少し後ろに下がって魔物たちの様子を伺っていると、先頭を走る魔物がディーネの力を込めた魔法陣の上を通ろうとして、勢いよく噴き出した水と共に遠くへ吹き飛んでいった。

 次の魔物も、メルの力を込めた魔法陣に足を踏み入れ、魔法陣から金属板が斜め上にせり上がる。

 ジャンプ台というか、投石器で弾き飛ばされるように、魔物が斜め上に飛んでいく。

 だけど三体目の魔物は何か危険を察したのか、見えないはずのノエルの魔法陣を避けたっ!

「ノエルっ!」

「えぇ、任せて!」

 ノエルの力で、残った魔物の足元に直径二メートル程の穴が現れ……そのまま落下する。

 どれくらいの深さなのかと、恐る恐る穴の中を覗いてみると……うわっ、リアの木の枝から下を見た時くらいの深さがあるな。

「カイちゃん。この穴を塞ぐために、もう一回魔力をもらうわねー」

「そうだね。このままだと危ないから、頼むよ」

「はーい!」

 ノエルの声と共に、穴の中へ土が入って行くんだけど……これ、なにげにかなり怖い力だよね。

 今更だけど、精霊の力はすごいし、変な使い方はしちゃいけないと自戒する。

 まぁ俺の場合、あくまでディーネたちに依頼をしているだけだから、変な使い方は止めてくれると思うけどね。

「三種類の精霊の力を、ほぼ同時に発動させるって……カイ先生。相変わらず無茶苦茶やな」

「え? そうなの?」

「普通は、今のどれか一つの威力を出すだけでも、十二分にすごいと思うし、そもそもさっきの魔法やったら、どれか一つの効果だけでも、三体まとめて倒せたと思うんやけど」

「それも考えたけど、さっきみたいに濡れても困るし、それだけじゃなくて、誰か一人だけの力を使うと、それはそれで後が大変なんだよね。贔屓しているって話になって」

「……カイ先生は、なんかウチと全く次元の違うレベルで苦労してるんやね」

 まぁ、そうかも。

 日本にいた頃、お正月に実家へ帰省したりすると、親戚の幼稚園児くらいの子供が何人かいて、一緒に遊んであげたら、全員同じくらいに構ってあげないと拗ねられて……うん。今の状況は若干あの時に近い気もする。

 あの時は、毎日幼児の相手をしている保育園や幼稚園の先生は、マジですごいって心底尊敬していたけど……ものすごく気を遣う職業なのかもしれないな。

 勝手に幼稚園の先生をリスペクトしつつ、ラヴィに案内してもらって歩き出す。

 しばらく歩き、お腹が空いてきたのでリアからもらったリンゴをラヴィと一緒にかじり、ディーネにお水を出してもらって、小休憩。

 沢山歩いていたからか、リンゴの甘さが身体に染み渡る。

「カイ先生、さすがやね。まさかリンゴに疲労回復効果を付与しているなんて」

「え? 確かに疲れが吹き飛ぶ感じがするけど……そんな効果があるの?」

「あれ? 違うん? でも、きっとそういう効果があると思うで。何か、疲労感が一気に消えていくし」

 なるほど。俺たちの状況を察して、リアがそういう効果を付与していてくれたのかも。