「め、メルたんだってすごいもん! えっとえっと……が、頑張れば兎耳族さんの村への通り道に、屋根を作ることが出来るもん!」
俺の表情から何かを察したのか、ディーネとメルが張り合いだした。
ただメルの言う、ラヴィの村まで続く屋根を作ったら、俺が魔力不足で気絶してしまう気がするけどね。
それを回避するために、未だにリアの木の周りの堀に、少しずつ鉄板を出しているわけだし。
そんなことを考えながらも、ラヴィと一緒に歩いていく。
少し進んで後ろを振り返り、自分が通った道を見てみると……薄っすら光っているような気もする。
これが精霊の道のようだ。
それから、しばらく歩いてリアの木がかなり小さくなると、不意にラヴィが足を止めて叫びだす。
「アカン! 魔物が来てるわっ!」
「魔物!? そんなの何も見えないよ?」
「カイ先生。ウチは兎耳族やで? ウチの耳を舐めたらアカン! もうすぐ、あっちから魔物が……ほら、ワイルド・ウルフが五体来てるやろ!」
ラヴィが指をさす方向から、何度か見た狼の魔物が向かって来るのが遠目に見える。
なんとかして撃退しなければならないんだけど、魔物が五体もいるのと、堀みたいなものがないから、小さな魔法陣では魔物が踏んでくれるかわからない。
というわけで、こんな魔法陣を作ってみた。
≪もしも、魔物が近付いてきたら、まとめて遠くへ吹き飛ばす≫
ディーネを呼んで魔法陣に力を込めてもらいつつも、ぶっつけ本番で思った通りの効果が得られなかったら危ないので、メルにも傍で控えてもらう。
あの魔法陣で一体しか吹き飛ばないとか、そもそも発動しなかったら、メルに金属の塊を発してもらおうと思いながら、様子を見ていると、先頭の一体が魔法陣に近付いて来て……五体まとめて吹き飛んだっ!
よし、成功っ! と思ったのも束の間で、俺の魔法陣への指定が悪かったらしく、出てきた水の量がものすごくて、結構な水しぶきが俺とラヴィにかかってしまった。
「カイ先生がすごいのはよーく知ってるけど、もう少し威力は抑えてもえーんちゃうかな?」
「ごめん……って、ラヴィ!? な、何をしているの!?」
「何って、濡れた服を着たままやと、風邪を引いてまうやろ? というか、カイ先生も脱がなあかんって」
びしょ濡れになったラヴィが服を脱ぎだし、止める間もなく下着姿になると、俺の服も脱がそうとしてくる。
「ちょ、ちょっと待って! 俺は大丈夫だから……」
「何言うてんねん! 風邪を舐めたらアカンで! こんなとこで風邪ひいてみ? 誰も治癒魔法を使われへんねんで!?」
そう言われると、ぐうの音も出ず、ラヴィに服を脱がされてしまった。