「ノエル。少し出掛けるんだけど、一緒に行く?」
「カイちゃんが出掛けるのなら、ママも当然一緒に行くわよ。でも、何処へ行くの?」
「ラヴィの村だよ。ここから半日くらい歩いたところに、村があるんだって」
「この辺りの兎耳族の村……あ、あそこね。あそこなら、道に迷うこともないと思うし、大丈夫だと思うわ。とはいえ、ママもカイちゃんについて行くわね」
あ、ノエルはラヴィの村の場所も知っているのか。
まぁ土の精霊だもんね。兎耳族は地面に穴を掘って暮らしているのだから、知っているか。
ただ、ディーネ、メル、ノエルが三人とも付いて来てくれると言うのだが、一つ気掛かりなことがある。
「リアはここから離れられないと思うんだけど、大丈夫かな?」
「リアさんなら、大丈夫だと思うけど……お兄ちゃんは、リアさんのことが心配?」
「うん。魔物だって現れるし、リアは逃げたりすることも出来ないと思うし」
「……むー。お兄ちゃんが、リアさんばっかり特別扱いするー。メルたんも大事にしてよー!」
「いや、リアを特別扱いっていうわけではないけど、もちろんメルも大切に想っているよ?」
「きゃー! お兄ちゃーん!」
メルが嬉しそうに抱きついてきたけど、これをされると……うん。予想通りディーネも抱きついてくる。
その様子を見たラヴィが怪訝な表情を浮かべているけど、メルたちのことが見えないって話だから、いきなり俺がよろけだしたって感じに見えているんだろうな。
ひとまず、ディーネとメルには一旦離れてもらい、リアの所へ。
「リア。少しだけラヴィの――兎耳族の村へ行ってくるよ」
「えぇっ!? カイ君、それって何処にあるの!? 戻って来るまでに、どれくらい時間がかかるのかな!?」
「リアちゃん、大丈夫よ。兎耳族の村は、そこまで遠く無いわ。今から出発しても、今日中には戻って来られると思うの」
あれ? ラヴィは片道で半日くらい掛かるって言っていたのに、ノエルが今日中に戻れるって言ってしまった。
まだお昼前だし、おやつとしてドーナツ作りにチャレンジしようとしていたところだから、ものすごく急げば、帰って来られる……のか?
「えっと、ノエルさんもカイ君と一緒に行くの?」
「もちろん! カイちゃんのことは私に任せて。しっかり守るから」
あぁぁ、ノエルがまたもや余計なことを言ってしまった。
いつものリアの言動を考えると、そんなことを言うと必要以上に心配して、なかなか出発できなくなるってば!
「そっか……ノエルさんが一緒なら心配ないかな。……カイ君。くれぐれも怪我をせずに戻って来てね。あと……はい、これ。お腹が空いたら食べてね」
「え? あ、ありがとう。無理せずに、ノエルたちと一緒に戻って来るよ」
「うん! じゃあ、カイ君が戻って来るのを我慢して待ってるね! いってらっしゃい」
リアにリンゴを二つもらい、ラヴィと共に兎耳族の村へ行くことになったのだが……どうしたんだろう。