詳しく聞くと、リアが宿っている大きな木は、元々存在している自然の木で、そこにリアが宿っているわけだから、魔力で生み出したわけではない……というわけで、あの木を使って火を起こせば、火の精霊を呼べるそうだ。
だけど、リアが魔力を使って生み出した木でも、ちょっとリアに申し訳ないのに、リアが宿っているあの木を少し折らせてくれなんて、絶対に言えないな。
「リアの木を使うのはなしかな。ディーネ、他の方法を知らない?」
「それがダメなら、そういうスキルをもっているひとに、たのむでち」
「あー、精霊石に精霊の力を込めることが出来るスキルがあるんだったね。そういえば、ラヴィもそんな感じのことを言っていたね。確か、祈祷師っていう人が、そういうことを出来るとか何とかって」
「ぐたいてきに、なにをするかはしらないでち。けど、ラヴィがそういっているのなら、きっとそうなんでち」
ディーネもスキルで何をするかは知らないらしいけど、祈祷師っていう言葉からすると、精霊に力を込めてくれってお願いする感じなんだろうな。
「ラヴィ。この辺りに祈祷師っていう人は……って、何をしているの?」
「あー、必要な荷物を纏めててん。精霊石の力を使い切ってもーたから、ウチの村の村長に、力を込めてもらおーと思って」
「ラヴィの村の村長さんが、精霊石の力を回復出来るの?」
「せやで。今から出発すれば、まぁ明日には戻って来られると思うから、ちょっと待っててーや」
ということは、ラヴィは半日くらい歩いて村へ戻り、また半日かけてここへ来るということか。
ラヴィの分の食事も一緒に作っていたとはいえ、腕輪はほとんど俺が使っていたから、ラヴィにだけ任せるというのは、ちょっと申し訳ないな。
「ラヴィ。俺も行くよ」
「ホンマっ!? カイ先生が村に来てくれたら、きっとみんな喜ぶわー! けど、それなりに歩くけど、大丈夫なん?」
「うん。途中で休憩はするかもしれないけどね」
よくよく考えると、俺は精霊たちを除けばラヴィとしか会ったことが無いし、この世界の村というのを見てみたい。
まぁ人間の村や街と違って、兎耳族は穴を掘って暮らしているとは聞いているから、建物とかは無いんだろうけど、何かしら得られるものがあると思うんだよね。
「ディーネ。さっき話していた、精霊石に力を込めることが出来る人がいるらしいから、ちょっと行ってくるよ」
「まつでち。それなら、ディーネもいくでち」
「ありがとう。ディーネが一緒に来てくれるのは、とても心強いよ」
半日くらい歩くわけだし、俺もラヴィも喉が渇いてしまうだろうしね。
「えぇー! お兄ちゃん。メルたんはー? メルたんには、一緒に来てって声を掛けてくれないのー?」
「も、勿論メルにも来てもらいたいよ」
「はーい! お兄ちゃんが行く所には、メルたんも一緒に行くんだからねー!」
ディーネ、メルとくれば、当然ノエルにも声を掛ける。