精霊が普通に力を使うよりも、俺が魔法陣にした方が、同じ魔力の量でも強い効果になるというのは、以前にディーネから聞いているが、魔法陣にはもう一つメリットがあって、その精霊が使わないような力を発揮出来るらしい。

「メルたんが自分で鳥さんに攻撃するなら、鉄の塊をぶつけることになるからねー! こんな串みたいな形にして鳥さんを攻撃するなんて、メルたんでは無理だよー!」

 というわけで、普段やらないようなことが実現出来るのが楽しいらしい。

 ただメル曰く、この魔法陣は高さの有効範囲が広いので、その分魔力を多く消費するとかで、毎回魔法陣を作る度に抱きついてくる。

 そんなに魔力を消費するのであれば、無理に作る必要はないと思うのだが、毎食鳥肉を食べるわけでもないので、結果として毎日一回この魔法陣を作ることになっていた。

 実際、この魔法陣を作って翌日に見に来ると、鳥が串刺しになっていることが多いし、そうでなくとも、この近くで鳥笛を吹けば事足りるからね。

「今日は、この場所やね。オッケー、覚えたで。ところで、カイ先生。今日は何を作ってくれるん? チキンソテー? チキンソテーやんな?」

「ラヴィ。それは昨日食べたから、今日は違うのにしよう」

 ラヴィが何かを期待するように、目を輝かせて見つめてくる。

 というのも、先日作ったチキンソテーに始まり、焼き鳥、蒸し鳥、鳥ハム……と、知っている鳥料理に挑戦してみたところ、うっかりラヴィを餌付けしてしまい、鳥肉を使う場合は俺が料理することになってしまった。

 まぁ俺としても同じ料理ばかりより、いろんな料理を食べたいというのはある。

 というわけで、今日はリアに全面協力してもらい、新たな料理に挑戦することにした。


「カイ君。こんな感じで良いのかな? 小麦の実を粉にしたんだけど」

「さすがリアだね。完璧だよ! ありがとう!」

「えへへ。カイ君に褒められたー! けど、この小麦の粉を使ってどうするの?」

「ちょっと、いくつか作ってみたい物があってね。まぁ見ててよ」

 リアに小麦を生やしてもらい、これを粉に出来ないかと聞いたら、普通に出来てしまった。

 日本で売っている小麦粉みたいに真っ白ではなくて、ちょっと茶色掛かっているけれど、十分だと思う。

 次は、鳥肉を一口大に切って塩を振り、作ってもらった小麦粉をまぶす。

 オリーブオイルを多めにフライパンへ入れたら、かまどに乗せて、鳥肉を入れる。

 そう! 鳥肉料理の人気ナンバーワンと言っても過言ではない、からあげに挑戦してみた。

 本当は、もっと調味料を使って下味をつけるべきなんだろうけど、油と小麦粉だけでもかなりの進歩だからね。

「カイ先生。これは何をしてるん?」

「鶏肉を油で揚げているんだよ」

「揚げる? 焼くと煮る以外にも、そんな調理方法があるんや。でも、煮る……とだいたい同じなんかな?」

「煮るっていうのは、スープで煮込んだりする調理方法だよね? それとは全然違って、これは油だからもっと高温なんだ。水は百度で沸騰しちゃうけど、油の沸点はもっと高いから……」