「いや、待てよ。そんなことより、発動する効果を可変にしてしまえば良いんだ」
「カイ先生? 何の話? 何か、ポロっとすごいことを言わんかった?」
「ん? いや、ラヴィの精霊石から出る火の強さが一定だから、それを変えられるようにしようと思って」
「えっ!? もしかしてカイ先生は、既に決められた精霊石の効果を変えることが出来るん!?」
「たぶん。いや、やったことがないから無理かもしれないけど、何となく出来そうな気がするんだよね。ラヴィ、ちょっと借りても良い?」
作った鳥肉料理――チキンソテーを食べ終えたので、ディーネに水を出してもらって食器やフライパンなんかを洗い終えると、精霊石に目を向ける。
腕輪を拾い上げ、精霊石に手が触れると、半透明のパネルが表示された。
≪もしも、登録者が「ファイア」という言葉を発したら、弱い炎を生み出す≫
なるほど。あれで弱い炎なのか。
もしも強い炎って書き替えたら……いや、やらないけどさ。
ひとまず、出来るかどうかはわからないが、トライアンドエラーで試してみようと、指でパネルに触れると、一部の内容を書き換えてみた。
≪もしも、「ファイア」という言葉を発したら、弱い炎を生み出し、「アップ」という言葉を発したら、炎を強くし、「ダウン」という言葉を発したら、炎を弱くする≫
登録者という言葉を消し、誰でも使えるようにしたつもりだが……とりあえず、やってみるか。
「≪ファイア≫」
「カイ先生。精霊石は予め魔力を登録した魔法使いにしか発動出来へん……って、火が出たっ!? ど、どうなってるん!?」
「≪アップ≫」
「えっ!? 何その言葉……って、火が強くなったぁぁぁっ!」
「≪ダウン≫」
「こ、今度は弱くなった!? ど、どういうことなん!?」
よし、上手くいったようだ。
これで、後はノエルにかまどを作ってもらえば、言葉で火力調整が出来るコンロの出来上がりだな。
……って、待てよ。
「ディーネ。この精霊石で何かを燃やせば、そこから火の精霊を呼び出せたりするのかな?」
「それはムリでち。せいれいは、しぜんのものに、やどるでち」
精霊は自然の物に宿る……か。メルは加工された金属から呼び出したけど、加工云々ではなく、その金属自体は元々何かしらの鉱物だったということかな?
だから、魔力や精霊石で燃やしたら、自然の炎ではないということだろう。
「え、えーっと、≪ファイア≫……それから、≪アップ≫……って、ウチが言っても火が大きくなったーっ!」