ただ一つ言えることは、いずれもリアやディーネたちが自分でやってくれているわけで、俺としては何もしていないんだよね。

 とりあえず、これまで通り精霊語を教えていくという方針は変わらないんだけど、ラヴィとしては魔法使いよりも、精霊使い――自分で魔法の効果を決めたいらしい。

 つまり、ディーネが魔法陣と呼んでいた、あの日本語の文章を書きたいってことか。

 ……ラヴィがやりたいことはわかったものの、さらにハードルが上がってしまった気がする。

 精霊語――日本語を理解して、かつ文字も書けるようにならないといけないんだよね?

 い、一年くらいかかるんじゃないだろうか。いや、下手をすればもっと掛かるかも。

「あっ! ちょっと待って! カイ先生! 鳥が飛んでる! 今日のお昼ご飯にするでっ! 狩りの仕方を見せるから、来てっ!」

「えぇっ!? ラヴィっ!?」

 今後のことを考えていたら、突然ラヴィに手を取られ、堀の外へと走って行く。

 よく見ると、ラヴィが口に何か咥えていて……あれが鳥笛ってやつかな?

「あ、鳥笛の音に気付いたみたい! ほな、ここからはカイ先生が吹いてみよか。はい、吹いて」

 唐突に、ラヴィが咥えていた鳥笛を手に取り、そのまま俺の口に突っ込んで来た。

 もう少し、説明して欲しかったんだけど、普通に吹けば良いのかな?

「――っ!」

 普通に吹いてみたけど、何の音もしない。

 これは吹けていないのか、それとも人間の耳には聞こえない音なのか、どっちだろう。

 判断がつかずに、鳥笛を吹きながらラヴィの顔を見てみると、ピクピクと大きなウサ耳が動いていた。

「カイ先生。上手に吹けてるで? そのまま続けてー」

 なるほど。俺には聞こえていないけど、ラヴィには聞こえていたのか。

 しばらく鳥笛を吹いていると、空を飛ぶ鳥が真っすぐ地面に向かって下りて来た。

 その直後、ラヴィが鳥に向かって大きく跳ぶ!

「とぉっ!」

「えぇっ!? そんなに高く跳べるの!?」

 ラヴィが俺の身長よりも遥かに高く跳び上がると、日本では見たことのない鳥を捕まえ、そのまま短剣で首を落とす。

 ものすごく手慣れた動きで、あっという間に鳥が食材になった。

「まぁこんな感じやな」

「なるほど。俺はそんなに高く跳べないから、なにかしら方法を考えてみるよ」

『まぁカイ先生に関しては、方法はお任せするわ。とりあえず、こんな感じで鳥が狩れるねん。というわけで、これからはカイ先生も一緒に狩ろな』

 うーん。ものすごく軽く言われたけど、この世界ではこれが普通……なのか。

 郷に入っては郷に従えと言うし、ラヴィの言う通り、俺も出来ることは一緒にやろうか。

 さすがにラヴィのように、跳んで捕まえるというのは不可能なので、メルに協力してもらって、何か道具を作ればやれそうだしな。

『せっかくやから、このままお肉も焼いちゃおっか』

『あ、それなら少し待って。昨日の塩は、焼く前に振りかけておいた方が良いんだ』