「あー、魔力のこと? けど、時間が経てば魔力は回復するよね?」
「せやな。魔力は使えば回復するな。けど、精霊の力は魔力では回復せーへんねん」
「え? そうなの?」
「せやで。魔力と精霊の力は別のもんや。魔力は人の体内で勝手に作られて、時間が経ったら回復する。けど、精霊の力は自然の力や。人の魔力みたいに、短時間で回復したりせーへんねん」
あれ? いつもディーネやメルは俺の魔力を使って力を使っているんだけど。
実際、前はメルが俺の魔力ではなく、自分自身を維持するための魔力を使って、大変なことになりかけたんだけど……どういうことだ?
「結局、普通の魔法使いってなんなの?」
「もう一回言うけど、ウチのことやって。自分の中にある魔力を使って、精霊石を発動させる者を魔法使いって言うんや。けど、この精霊石は使える回数が決まっていて、勝手には回復せーへんねん」
そう言って、ラヴィが腕輪に付けられた、燃える様に赤い石を見せてくれた。
親指の指先くらいの大きさの石だけど、これに火の精霊の力が込められているらしい。
「でや。この精霊石を使う度に、精霊石に込められている精霊の力の使用回数と、ウチの魔力が減るっていうわけや」
なるほど。ということは、俺がディーネやメルに力を使ってもらう時も、精霊の力というのが減っているのだろうか。
早速ディーネたちに聞いてみる。
「ディーネは、パパのまりょくをもらってるから、なんともないでち」
「メルたんもだよ。だから、前にお兄ちゃんの魔力が少なくなって、大変なことになったでしょ?」
ディーネとメルから、即答で否定されてしまった。
どうやらラヴィが持っている精霊石と、ディーネたち精霊とでは根本的に考え方が違うようだ。
「ラヴィ。じゃあ、その精霊石に込められている精霊の力が無くなったら、もうそれは使えないの?」
「せやで。けど、魔法使いとは違う、祈祷師っていう人がおって、その人が祈りを捧げることで、精霊が精霊石に力を込めてくれて、また使用回数が回復するねん」
へぇー、祈祷師かぁ。日本で聞くと、ちょっと怪しい感じがするけど、こっちの世界では普通の存在なのか。
「それから、精霊使いっていう人が、この精霊石を使った時に、どういう効果が発動されるかを決めるんやけど……この使う、溜める、決めるをカイ先生は一人で全部やってるんやで!? これがどれだけすごいことかわかる!? 精霊石を発動させるために、決められた魔力を制御する訓練だけでもものすごい大変やったし、精霊石に力を込める方法なんて見当もつかへんし、精霊石の発動効果なんてどうやって決めてるん!? 意味がわからへんねんけどっ!」
「と、とりあえずラヴィは一旦落ち着こうか」
「とにかく、カイ先生は自分がすごいことをしてるっていう自覚を持って、ウチに教えてっ!」
えぇ……ラヴィに早口でまくしたてられたけど、褒められているのか怒られているのか、どっちなんだろう。