だから魔法陣も新たに作っていない……って、そんな話をしている間に、どんどん陽が落ちて暗くなってきたので、急いで浴槽から出て、今日は就寝することに。
「じゃあ、カイ君とメルちゃんは私の所へ来て」
「カイちゃん。ママはラヴィちゃんの寝床の準備が済んでいるから、いつでも大丈夫って、伝えてくれる?」
「わかった、ありがとう」
俺はいつものようにメルとディーネと共に、リアの所へ。
その一方で、土の精霊のノエルは地中で眠るのだけど、兎耳族のラヴィも地面に穴を掘って暮らす種族らしい。
そのため、リアの周りは何も無くて地平線が見えているけど、割と近くにラヴィたちの集落があるそうだ。
「ラヴィ。ノエルがいつでも良いって」
「おおきに! ほな、カイ先生。また明日―! おやすみー!」
「うん、おやすみ」
ラヴィがノエルの作った穴の中へ入ると、リアが俺たちを蔓で木の上へ運ぶ。
久々に食べたお肉は美味しかったなーと、お肉の味を思い出しながら眠ることにした。
◇◆◇
翌日。朝食を済ませると、早速ラヴィに精霊石について教えてもらうことにしたんだけど、いきなり待ったが掛かる。
「精霊石について話す前に、カイ先生は普通の魔法使いについて知った方が良いと思うねん」
「どういうこと?」
「カイ先生は、ずっと一人で暮らして来たんやろ? だから、普通の魔法っていうのがどういうものかわかってへんし、カイ先生がどれだけすごいことをしているかを理解してもらおうかと思って」
まぁ、ラヴィの言う通りで、精霊を除けば、初めて会った人間……というか、獣人がラヴィだからね。この世界の普通がわかっていないと言われれば、その通りだと思う。
ただ、この世界の普通はわかっていないけれど、リアに出会うことが出来たのは本当に僥倖だったというのは俺もわかっているけどね。
「じゃあ、まずは普通の魔法使いについては、ウチのことやと思ってくれたらえぇわ」
「え……ラヴィが?」
「せやで? 何か問題でも?」
「いや、だって昨日鳥を捕まえるっていう話をしていたけど、鳥笛で呼び寄せた後、魔法じゃなくて短剣で鳥を仕留めたんだよね?」
実際に狩りをしているところは見ていないけど、魔法使いって言ったら、杖とか掌から炎の弾とかを飛ばすイメージがある。
短剣で鳥を倒しましたって言われたら、魔法使いって言うより戦士だよね?
「はぁ……まず、カイ先生のおかしい所の一つ目がそれな。昨日も言ったけど、普通の人は使える魔法の回数が決まってるねん。だから、魔法を使わなくても良い状況なら、使わへんねんって」