「あー、それは俺も思ったよ。何もせずに一日が終わっちゃったもんね」
「まぁしゃーないかー。とりあえず、完全に陽が沈む前に寝る準備をせんとなー』
そう言うと、その場でラヴィが服を脱ぎ始める。
「ら、ラヴィ! だから、いつも言っているけど、いきなり服を脱ごうとしないでよっ!」
「え? いつも一緒に水浴びしてるやん」
「いや、確かにそうだけど、そもそもそれも……」
「はいはい。えぇから、早く。夜になってまうでー」
ラヴィにスポーンと服を脱がされ、水浴び用の浴槽へ。
まぁ幸いというか、当たり前というか、リアにバスタオルみたいな大きな布を作ってもらい、必ずそれを身体に巻くように言っているので、そこは守ってくれているけどね。
ただ、ディーネに出してもらっている水で汗を流すんだけど、そこへメルも入って来るから、スペース的にあまり余裕はないんだよね。
一緒に入らなくても順番で入ればよいのに……まぁ今日は時間が無いから仕方ないか。
「そうだ、ラヴィ。一つ聞きたかったんだけど、ラヴィは火の精霊が使えるんだよね?」
「え? まさか。直接精霊の力を使える魔法使いなんて、カイ先生くらいやで?」
「でも、あの鳥は? どうやって丸焼きにしたの?」
「あー、あれは精霊石を使ってん。……って、カイ先生は、精霊を使えるから、ものすごく一般的な精霊石のことを知らんのか」
精霊石? いや、どこかで聞いたことがあるな。何だっけ?
確か、ディーネに聞いた気がするんだけど……あ! あれか! 魔法陣の動力源だ!
俺は自分の魔力を使って、ディーネやメルに魔法陣へ精霊の力を込めてもらうけど、その代わりに精霊の力が込められた、精霊石っていうのを使うって言っていたっけ。
「つまり、ラヴィは精霊石を使って魔法陣を作り、鳥を焼いたってこと?」
「魔法陣? カイ先生、魔法陣って何!?」
「え? 精霊の力で発動する魔法の力みたいなのだけど?」
魔法陣っていう言葉は、翻訳魔法がこっちの世界の言葉に訳してくれなかったのかな? と考えていると、驚いた表情のラヴィが一気に顔を近付けてくる。
「ま、まさかカイ先生は、自分で魔法を作れるん!?」
「ら、ラヴィ! 近いよっ!」
布を巻いているとはいえ、一緒に水浴びをしている時点で事案ものだから、迫って来ちゃダメだって!
「そんなんどーでもえーねん! それより、さっきの質問! カイ先生は自分で魔法を作ってるん!?」
「うん。どうやらそういうスキルを持っているみたいなんだ」
「アカン。カイ先生が思っていた以上にすごすぎるわ。この数日、カイ先生がその場で精霊の力を使っているのを目の当たりにしてすごいと思っとったけど、それだけやなかったんか」
なぜかラヴィから呆れと尊敬が混ざった表情を向けられたけど、ラヴィが来てから魔法陣を作ったことってなかったっけ?
思い返してみると、ラヴィが来てから、一度も魔物が来てなかったか。