あれ? 余計なことを言ってしまった……と思ったら、突然ラヴィが深々と頭を下げてきた。

「これはもしかして、カイちゃんがビシッと獣人の子に言ってくれたのかな? リアちゃんに手を出すなって」

「わぁ! カイ君、そんなことを言ってくれたの!? 嬉しいっ! カイ君、大好きっ!」

「お兄ちゃん! メルたんは!? メルたんのことも話してくれたよね!? お兄ちゃーんっ!」

俺とラヴィの会話の内容がわかっていないノエルたちが色々言っているが、申し訳ないけど全然違う話なんだ。

「いきなり弟子って言われても……そもそも、俺が嘘を吐いているかもしれないよ? 精霊を呼び出したとか」

「いや、この堀を見ればわかるって。こんな何も無い土地やのに、綺麗に直線で、しかも広くて深い堀を作るなんて、土の精霊の力を借りな無理やもん。精霊石を使っている感じもせーへんし」

 あー、それは確かに。

 堀もそうだけど、メルが出してくれた薄い鉄板も新品そのものだし、そもそもこんな所に綺麗な形の鉄板が存在するのもおかしいか。

「師匠! まず何から始めたらえーかな? とりあえず、この辺りの雑草を抜いて、綺麗にしよか?」

「待って、待って! 師匠って呼ぶのは止めて! あと、ラヴィを弟子にするのは無理だよっ! 俺に教えられることなんて無いってば」

「師匠……があかんなら、カイ先生! そう言わずに、お願いや! ウチは、何としても優秀な魔法使いにならなあかんねん!」

 いや、そんなことを言われても、ただただ困るんだけど。

 仮に俺がラヴィに教えらえることがあるとすれば、日本語……というか、精霊語くらいだろうか。

 魔法の使い方なんて本当にわからなくて、ただディーネたちにお願いしているだけだしさ。

 そんなことを考えて言えると、急にラヴィが俺の手を握り、まっすぐに俺の目を見つめてくる。

「カイ先生。ウチへ招く話は取りやめや! ウチがここに棲むわ!」

「えぇっ!? ま、待って! どうしてそうなるのっ!?」

「カイ先生がウチを弟子にしてくれへんのやったら、精霊魔法を極めるにはどうしたらよいか、先生から見て学ばせてもらうことにしてん! えーやろ? というか、勝手に居座るで」

「いや、そう言われても困るんだけど」

 勝手に居座るって、完全な居直りだよねっ!?

「カイ君。どうして獣人の女の子から、手を握られているのかな? どういう話なのかを説明してくれる?」

「お兄ちゃん! メルたんも! メルたんも手を繋ぐのっ!」

「パパー。けっきょく、どうなったのー?」

 リアとメルとディーネが詰め寄ってきたけど、どうしてこうなったのかは、俺が聞きたいくらいなんだ。

 だけど、兎耳の少女ラヴィの決意は固く、一緒に生活することになってしまった。