『なぁなぁ、君! ウチはラヴィっていうねん』
『……はぁ』
『いや、はぁ……やなくて、ウチが名乗ってんから、自分も名乗りぃやー』
えぇ……突然十六歳くらいのちょっと気の強そうな少女が現れたかと思ったら、急に怒りだしたんだけど。
とりあえず、精霊では無さそうだし、頭から兎みたいな耳が生えているし……もしかして、この世界の住人なのっ!?
『俺はカイって言うんだ。ところで、一つ教えて欲しいんだけど……』
『ちょい待ち! 先にウチが話しかけてんから、ウチが先に質問や! この場所だけ、この辺りに生えてへん植物が沢山生えているし、ものすごく深くて大きい堀があるし、相当な腕の魔法使いがおるやろ。ウチに紹介してーや』
魔法使い……って、何だろう?
ここで植物を出しているのはリアだし、堀を作ったのはノエルだ。
でも、二人とも精霊だから、魔法使いではないよね?
どういうことだろう? と、助けを求めるようにノエルに目を向けると、ノエルが困った表情を向けてきた。
「カイちゃん。今は、どういう話になっているの?」
どういう話になっているの……って、今俺のすぐ隣でラヴィの話を聞いていたよね?
「ノエル。彼女……ラヴィが、凄腕の魔法使いを紹介してって言っているんだけど、魔法使いって誰のことなの?」
「あー、そういうことなのね。この女の子は、兎耳族っていう獣人なんだけど、精霊の力を借りることが出来る者のことを、魔法使いって呼んでいるみたいね」
「精霊の力を借りる……ってことは、つまり俺ってこと?」
「そういうことね。けど、カイちゃん。ママやディーネちゃんに、メルちゃんはカイちゃんの魔力で具現化しているから、その女の子に話しても良いけど、リアちゃんのことは絶対に話しちゃダメだからね? わかった?」
珍しく、ノエルがちょっとキツめに――と言っても、子供に注意する母親みたいな感じで、話し掛けてきた。
要はリアのことをラヴィに話すなってことだけど、すぐ隣にラヴィがいる状態で、リアのことを思いっきり話しているよね? これは良いの?
ノエルの言葉を不思議に思っていると、気付いた時にはラヴィが俺を凝視し、身体をプルプル震えさせていた。
これは、アレか。目の前にいるラヴィを無視して、ノエルと話していたことに怒っているのか。
うーん。結構、自己主張が強い女の子だし、どうしたものか。
そんなことを考えていると、突然ラヴィが俺の両腕を掴んできた。
『あ、アンタ! いや、カイ! い、今のって精霊語やんなっ!? そこに精霊がおるん!?』
『え? 精霊語? それはよくわからないけど、精霊はいるよ?』
『うわぁぁぁっ! すごっ! ウチより遥かに小さいのに、その年齢で精霊と話せるんっ!? いや、ホンマにすごいわ! きっと師匠の教え方がえぇんやろな! ほんで、カイの師匠は何処におるん?』