「来てくれて、ありがとう。俺はカイって言うんだけど、頼みがあるんだ」

「いいわよー。カイちゃんが魔力をくれるなら、ママ頑張っちゃう」

 いや、ママって。でもさっきメルが言っていた母なる自然ではないけれど、母なる大地って呼んだりもするか。

 ……それでも、俺の母親ではないから、ママという一人称には戸惑ってしまうが。

「それで、カイちゃんはママに何をして欲しいのかな?」

「この垣根の外側に堀を作って、魔物が外から侵入出来ないようにしたいんだ」

「そうなのね。カイちゃんは、この木を守りたいのね。優しいわね」

「いや、リアを守りたいという気持ちはもちろんあるんだけど、今はどっちかっていうと守られてばかりなんだ」

「うふふ。カイちゃんの優しい心に惹かれて、いろんな精霊が集まっているのね」

 ちゃん付けで呼ばれるのと、一人称のママに困惑しっ放しなのだが……あ、ようやく堀を作ってくれるみたいだ。

「じゃあ、カイちゃんの魔力をもらうわね……あらあら、カイちゃんは凄いのね。こんなに魔力を持っている人間族なんて、聞いたことがないわ」

「あー、みたいだね。ディーネからも、似たような事を言われたよ」

「これなら……そうね。何回かに分けてやった方が良いかと思っていたけど、一度で出来ちゃうわね。えーい!」

 リアが言っていた通り、ノエルが力を使うと、幅三メートル、深さ二メートル程の堀が、垣根をグルッと囲むようにして一瞬でできあがった。

 これなら、ワイルド・ウルフも垣根を飛び越えられないだろう。

 あと、この堀へディーネが水を入れてくれたら、さらに効果が高まる気がするな。

「ノエル、ありがとう」

「あらあらー。ちゃんとお礼が言えて偉いのねー。カイちゃんは」

 堀を作ってくれたことに礼を言うと、ノエルが俺の頭を撫でてきた。

 うーん。やっぱりこの容姿のせいなんだろうな。ノエルも俺を子ども扱いしてくる。

「ノエル。俺は、幼く見えるかもしれないが、もう三十歳くらいの年齢で……」

「まぁ。まだ三十歳なのに、ここまでしっかりしているの!? とっても賢い子なのねー」

 これもリアと同じようなリアクションか。

 確かリアが百八十歳って言っていたけど、ノエルはそれ以上なんだよな?

 仮にノエルが三百歳だとしたら、三十歳の俺は十分の一だから……三十歳のお母さんが三歳児の相手をするとしたら、何となくこんな感じだって思ってしまうな。

 そんなことを考えていると……あ、あれ? 若干、ノエルの顔が引きつってないか?

「か、カイちゃん。何となく……何となーくなんだけど、ママのことについて、何か失礼なことを考えてないかしら? 例えば、年齢のこととか」

「か、考えてないよ? いや、本当に」

「そう? なら良いのよー」

 えーっと、精霊でも女性に年齢の話は禁句ということか……って、俺は声に出してないよね!?

 もしかして、顔に出ちゃっていた!? それともまさか、読心術が使えるとか!?