なんだか、相関関係がややこしいけど、それはあんまり気にしなくてよさそうだから、問題は俺の魔力枯渇か。

「ディーネ。大人の土の精霊が、メルより――幼い金の精霊より多くの魔力を消費するかどうかって、わかる?」

「きいてみるでち。……えっと、おとなのせいれいのほうが、まりょくのせいぎょにたけているから、しょうひがすくないらしいでち」

 なるほど。大人の精霊の方が魔力の制御に長けているというのは、言われてみればその通りか。

「つまり、大人の土の精霊の方が、魔力の消費が少なくて、魔力枯渇になり難いってことでよいんだよね?」

「そうでち。ただ、せいれいをさんたいもよびだしたら……」

「でも、俺の魔力は多いから大丈夫じゃないかな? もちろん、力を使ってもらう時には気を付けるよ」

「そ、それなら、だいじょうぶかもでち」

「じゃあ、これでリアの懸念は全て解消できたのかな?」

 ディーネにいろいろ教えてもらった結果、リアが安心した表情を浮かべて頷いてくれたので、後は土の精霊を呼びだすだけだと思っていると、突然横からなにかがぶつかってきた。

「お兄ちゃん、遅いよー! まだお話は終わらないのー!?」

「メル!? ごめんね。もう少し……って、そうだ。堀を作る為に土の精霊を呼びだそうかって話をしていたんだけど、メルは特に問題ないよね?」

 リアとディーネにだけ相談して土の精霊を呼びだすのはよくないと思い、横から抱きついてきたメルに話すと、意外な答えが返ってくる。

「えぇっ!? 精霊が増えたら、お兄ちゃんが取られちゃうっ!」

「いや、そんなことはないと思うんだけど……」

「だって、土の精霊ってことは、たくさん土があるし、お母さんみたいな精霊が来て、お兄ちゃんを懐柔していくんだー!」

 懐柔って。メルは一体なにを想像しているんだ?

「えっと、お母さんではなくて、お父さんかもしれないよ?」

「ううん。精霊は全員女の子だよ。男の子の精霊はいないよ」

「えっ!? そうなの!?」

「うん。精霊は母なる自然の力を担うからね」

 母なる自然か。なんとなくだけど、わかるようなわからないような……まぁそもそも異世界だから、考えてもしかたないのかもしれないけどさ。

 ひとまず土の精霊を呼んだ後も、メルと接する時間を減らしたりはしないと約束し、土の精霊を呼びだすことになった。


「土の精霊よ、来て!」

 土を持つ代わりに、地面に手を置いてそう言うと、ムクムクと土が盛り上がってくる。

 その土は、瞬きする間に人の姿になり、リアと同じくらいの身長ではあるものの、二十代半ばくらいの茶髪の女性となった。

「うふふ。随分とかわいい男の子にお呼ばれしちゃったわね。私は土の精霊のノエルよ。よろしくね」