「あのね。ここには土が沢山あり過ぎるでしょ? だから、カイ君が土の精霊を呼んだら、きっと大人な土の精霊が現れちゃうと思うの。そうしたら、カイ君の魔力をたくさん使うことになって、また魔力枯渇で倒れちゃったりしないかなって思って」
リアが、垣根の外で暇そうにしているメルにチラっと目をやり、再び俺を見つめてくる。
なるほど。リアは俺がメルの力を借りた時に倒れてしまったことを心配してくれているのか。
確かにディーネは水が。メルは金属が少なくて子供の姿だけど、土は十分にあるから大人の姿の精霊が現れそうだな。
やっぱり、子供の姿の精霊よりも、大人の姿の精霊の方が、たくさん魔力を必要とするということなのだろう。
「それだけではなくて、もう一つ懸念事項があるの」
「え!? まだあるの!?」
「えぇ。水の精霊と土の精霊の相性が悪いから、ディーネちゃんが心配なのよ」
リアから精霊の相性問題の話が出て来たけど、ディーネの話というのは困ったな。
俺のことなら、俺が気をつければよいけど、ディーネになにか悪い影響があるのは避けたい。
「木の精霊は金の精霊が苦手だけど、メルちゃんが小さいから、私は大きな影響を受けていないわ。でも、幼いディーネちゃんに対して、大人の土の精霊が近くにいるのは心配なのよ」
「なるほど。だったら、土の精霊を呼び出すのはやめておこう。ディーネの体調が悪くなったりするのは嫌だからね」
もしかして、ディーネがふよふよ浮いているのは、土に触れたくないからだったりするのだろうか。
ディーネが……というより、土は何処にでもあるから、水の精霊が土に触れないよう、空を飛べるように進化したのかもしれない。
今のところ、空を飛べるのはディーネだけで、リアもメルも空を飛ぶことは出来ないしね。
「まってほしいでち。ディーネなら、へいきでち」
「あれ? ディーネ!? いつの間にいたの?」
「ん? さいしょから、いたでち。ずっとパパのうしろに、いたでちよ?」
そういえば、さっきメルを見た時、ディーネの姿が見えなかったけど、俺の後ろにいたのか」
「えっと、じゃあ話を戻すけど……俺はディーネに無理をしてほしくないんだ」
「ちがうでち。むりとかじゃなくて、ほんとうにだいじょーぶなんでち。パパが、つちのせいれいをよびだすなら、ディーネとおなじまりょくにいぞんするでち。そのばあいだと、せいれいどうしは、かんしょうしないって、ほかのみずのせいれいが、おしえてくれたでち」
ディーネによると、俺が土の精霊を呼び出すのであれば、ディーネと同じ魔力を使うから、相性の悪い精霊でも干渉されないらしい。
「じゃあリアみたいに、何処かの土に宿っている土の精霊に遭遇すると、良くないってことなの?」
「そのとおりでち」
なるほど。そうだとすると、なおさら俺が土の精霊を呼び出した方が良いってことか。
「メルも、ディーネと同じく俺の魔力を使うから、相性については問題ないってことだよね?」
「そのとおりでち。むしろ、きんのせいれいは、つちのせいれいと、あいしょうがよいでち」
金の精霊と土の精霊は相性が良いのか。

