「くっ! 諸刃の剣だけど、仕方ないわね。カイ君、ちょっとこっちへ来て。作ろうとしている堀について、話があるの」
リアが真面目な表情を浮かべているので、抱きついているメルに離れてもらい、俺一人で垣根の内側へ。
「あのね。実はカイ君が作ろうとしている堀を、すぐに作る方法があるの」
「えっ!? そうなの!?」
「うん。だけど……」
何だろうか。リアがすごく良さそうな提案をしてくれたのだが、なぜか歯切れが悪い。
何か躊躇っているような気もするんだが……こればっかりは聞いてみるしかないか。
リアが俺に言いかねている懸念事項と、魔物対策のために堀を作ることを天秤に掛け、どちらの方が有益かを判断するためにも。
「リア。リアが俺たちを心配してくれているのはすごくわかるんだ。だから、今リアが悩んでいることを俺たちにも話してほしい? 一人で悩むよりも、ディーネやメルも加えて、一緒に意見を出し合った方が良いと思うんだよ」
「そ、そうよね。まずはすぐに堀を作る方法なんだけど、土の精霊をカイ君が呼び出せば良いと思うの」
「なるほど。ディーネが水を、メルが金属を操るみたいに、土を操ってもらうんだね。しかも、土ならたくさんもあるから、わざわざ探しに行く必要がないよね」
「そう、それなの。リアお姉ちゃんが懸念しているのは」
土は探さなくても大丈夫と言った途端に、リアの表情が曇る。
どういうことだろう。土が沢山あることが懸念事項なのか? それとも、土自体に何か問題があるということなのか?
「リア。例えばだけど、この辺りの土は栄養があまり無いから、土の精霊を呼び出せなかったりするの?」
「んー、土に栄養が少ないっていうのはその通りだけど、土の精霊を呼び出すことには関係ないかな」
「それなら、何が問題なの?」
「……ううん。やっぱり大丈夫。これは私が心配しすぎなだけかもしれないし、カイ君は土の精霊を呼び出して」
「いや、そういうわけにはいかないよ。さっきも言ったけど、リアが悩むことがあるなら、みんなで一緒に考えようよ」
特に俺はリアがいてくれなければ、この世界で生きていくことが出来ない。
感謝してもしたりないくらいなのだから、少しでもリアのために協力出来ることがあるなら、是非助けてあげたいからね。
「カイ君がそこまで言うなら……わかった。じゃあ、カイ君。リアお姉ちゃんの不安について、お話を聞いてくれる?」
「もちろん」
不安そうなリアの目を真っすぐ見つめながら、大きく頷くと、リアがようやく心の内を話しだす。