だけど、魔力が回復して、もう消えたりしないはずのメルが抱きついてきた。

「メル、どうしたの? もう大丈夫なんだよね?」

「メルたん、お兄ちゃんにさっきのをもっとして欲しいなー」

「さっきのは緊急事態だったから取った行動であって、普段はそういうことはしないんだよ」

「なるほど。ということは、またメルたんが自分の意志で勝手に力を使えば……」

「ダメだからねっ! さっき助けてくれたことは本当に感謝しているけど、危ないことはしないでっ!」

「むー。はぁーい」

 なぜかメルが頬を膨らませながらも、チラチラ俺の顔を見て来るが、ひとまず俺の走馬灯と、メルが消えてしまうかもしれないという危機は乗り切ったようだ。

 ちなみにディーネが言うには、俺が自分で魔力をコントロールして、メルに魔力を渡していたらしい。

 だけど、改めてやってみようとしたものの、自分で意識してできなかったので、いわゆる火事場の馬鹿力というやつなのかもしれないな。


 というわけで、改めて当初考えていた、生垣の外側に堀を作ることにした。

 とりあえず、落ちていた石を使って穴を掘り始めたんだけど、どういうわけかメルがずっと俺のそばにいる。

「……お兄ちゃん。疲れてない?」

「いや、まだ作業を始めたばかりだから大丈夫だよ」

「……お兄ちゃん。頑張り過ぎは、よくないよ? 休憩しよ?」

 メルが作業をしている俺の服を引っ張りながら、ちょくちょく休憩を促してくる。

 まぁメルの見た目の年齢的には、もっと遊びたかったり、構って欲しかったりする年齢だし、仕方ないか。ただ、リアでもディーネでもなく、なぜかずっと俺のところにいるけど。

 まぁ拗ねているメルに比べれば、全然よいけどね。

「パパー! メルちゃんと、すっかりなかよくなったねー!」

「あぁ、そうだな。俺としても嬉しいよ」

「本当っ!? じゃあ、お兄ちゃん。メルたんを抱っこしてー!」

 ディーネと話をしていると、メルが抱きついてきて、話に割って入る。

 うーん。また新たな魔物が現れる前に何かしら対策をしておきたいんだけど……捗らないな。

 とりあえず、メルに大きなシャベルを出してもらえれば、多少マシになりそうな気がするけど、リアは大丈夫かな?

「…………」

 垣根の中にいるリアの様子をチラっと伺ってみると、なぜかジト目で無言のまま俺を見つめている。

 これは、遊ばずに早く作業を進めろってことだろうか。

 いやでも、よく見ると頬を膨らませている。リアもメルと一緒に遊びたいけど、この垣根が行動可能なギリギリの範囲で、来られないってこと?

 メルをリアの近くに連れて行ってあげればよいのかな? と考えていると、リアが何かを決意したような表情を浮かべる。