「これは……生垣か」

「うん! 全部囲わずに、さっきカイ君が魔法陣を作ってくれたところを出入口として開けておけば、作る魔法陣も一つで良いよね」

「なるほど! リア、ありがとう」

 リアがテニスコート程の広さを生垣で囲い終えたところで、朝食に。

 いくつかの植物が魔物に食べられてしまったけど、ディーネが水を与えると、再び実を作ってくれたので、ありがたくいただく。


 それからしばらくして、みんなでまったりしていると、

「パパー! まものがきたでち!」

 朝に見たワイルド・ウルフという狼みたいな魔物が再び現れた。

「来たんだね! 俺とディーネが力を合わせて作った魔法陣の威力を試す時だよっ!」

「カイ君、それより私の所へ来て! メルちゃんもっ! 一旦、木の上に逃げるよ!」

 そう言って、リアが有無を言わさず俺を抱きしめると、メルが慌てて走り寄って来る。

俺の胸にメルが飛び込んで来たので、ぎゅっと抱きしめたところで、リアが蔓の力を使い、三人で一気に木の上へ。

「ま、まってほしかったでち」

「ごめんね。ディーネちゃんはお空を飛べるから大丈夫かなって思っちゃって」

 ディーネがふよふよと俺たちのところへ飛んで来た頃には、五体のワイルド・ウルフが垣根の出入口――魔法陣を設置した所へやってきた。

 昨日の遺跡では、二足歩行――人間が触れることを起動条件としていたが、今回作った魔法陣は無事に起動してくれるだろうか。

 ドキドキしながら魔物たちの様子を伺っていると、生垣の周りをグルっと一周回った後、唯一の入り口に向かってやってきた。

 よし! そのまま来るんだ! あと少し……来たっ!

 先頭のワイルド・ウルフが水色のパネルを踏むと、そこから間欠泉のように勢いよく水が噴き出す。

「やった! 成功だ!」

 激しい水に吹き飛ばされ、ワイルド・ウルフが遥か彼方へ消えて行ったのだが、すぐに噴出していた水が消えてしまった。

「って、あれ!? 残りの四体が普通に入って来た! もしかして、魔法陣って一回しか使えないのっ!?」

「パパー。ごめんなさいでち。あのまほーじんに、ディーネがいっかいぶんしか、ちからをこめてなかったでち」

 どうやら、ディーネがどれくらいの魔力を込めれば良いかわからず、一度しか発動しなかったようだ。

「じゃあ、入って来た四体は、メルたんの力で……」

「いや、それはちょっと」

「えー。お兄ちゃん。メルたんも活躍するー! ディーネちゃんばっかり、ズルいー!」