果物ナイフ……とは厳密に言うと違うが、イメージとしてはアレに近い。

 日本では基本コンビニ弁当だったけど、たまにする自炊で使っていて、すごく便利だったんだよね。

「ペティナイフも大丈夫! じゃあ、作るねー!」

 そう言って、メルが俺の足に抱きつく。

 おそらく魔力をもらうためなのだろう。メルが俺に抱きついたまま小さな腕を伸ばすと、真っ白に光り輝き……その手に小さなナイフが握られていた。

「お兄ちゃん、作ったよ。あと、危ないからカバー付きにしておいたよ」

「ありがとう、メル」

「ううん。どういたしまして」

 メルからナイフを受け取ると、次はリアに向き直る。

「リア。メルに金属のナイフを作ってもらったんだけど、これだとどうかな? 何か気分が悪くなったり、嫌な感じがしたりする?」

「それくらいなら大丈夫よ。だから、カイ君が必要な物があるなら、メルちゃんに作ってもらってもよいと思うよ」

「そっか。じゃあ、あといくつかお願いしようかな」

 というわけで、金属でも小物なら、リアの近くにあっても大丈夫らしい。

 なので、早速フォークとスプーンを作ってもらった。

 メルがここでの生活に慣れてきて、火の話が出来るようになったら、その時は鍋とかの調理器具の相談をさせてもらおう。

「ところでカイ君。あのナイフで何をするの?」

「えっとね、調理に使おうと思ってさ」

「調理……って、カイ君のご飯なら私が用意するよ?」

「うん、そうなんだけど、ちょっとやりたいことがあってね」

 不思議そうにするリアに実演ということで、丁度食事時になって来たので、リンゴを出してもらう。

 そのリンゴをナイフで皮を剥き、一口大のサイズに切ってみた。

「どう? これなら、食べやすいでしょ?」

「なるほど! 確かにカイ君の言う通りね」

 精霊は食事を必要としないそうなので、食べ易さとかって発想はなかったらしい。

 せっかくなので、リアにお皿とコップに、お箸の説明をして、ついでに作ってもらうことにした。

「えっと、コップとお皿はわかるんだけど、お箸……って、ただの棒だよね?」

「うん。そうなんだけど、使い慣れると凄く便利なんだよ」

「そうなんだー。お兄ちゃん。メルたんも、そのお箸っていうのは知らないかなー」

 リアだけでなく、フォークやスプーンを知っていたメルも、箸を知らないと言うあたり、西洋寄りの文化なのかな?

 まぁそもそも異世界なので、比較すること自体がおかしいのかもしれないけど。

 でも、一通りの食器類が揃って、これだけでも生活が大きく変わったような気がする。

 それから、リアが出してくれた食事をいただき、就寝することに。