「えぇぇぇっ! カイ君のいじわるーっ!」

 リアは年齢的によろしくないので諦めてもらったのだが、いつの間にか目覚めていたメルが、ものすごく困った表情を浮かべて、俺を見ていた。

「お、お兄ちゃん。メルたんも入ったほうがよい?」

「いや、無理に入らなくて良いから! 俺たちは、暑いから涼んでいるだけなんだ」

「た、確かに日差しがキツくて暑いし、メルたんは熱に弱くて……メルたんも入るっ!」

 止める間もなくメルが下着姿になり、そのまま浴槽の中へ入ると、俺の脚の上に座ってきた。

 そのままメルが遠慮なしにもたれかかって来て……あー、メルが普通に浴槽へ座ると、水面が顔より上で溺れてしまうから、俺を椅子の代わりにしているのか。

 とはいえ、三人も入るとザバーっと水が溢れ……突然、周囲の草が青々と生い茂る。

「リア。ディーネのお水が草むらに零れたら、草がいきなり大きく伸びたんだけど」

「ディーネちゃんのお水をもらって、一気に植物が育ったみたいね」

 詳しく聞くと、木の精霊が金の精霊を苦手としている一方で、水の精霊とは相性が良いらしい。

 水は木を育てる効果があるので、さっきのようなことが起こったのだとか。

 それからしばらくまったり過ごして浴槽から出ると、リアが俺とメルの身体を拭いてくる。

 メルはともかく俺は自分で拭けると何度も……見た目は子供でも、中身はアラサーなのにっ!


「さてと。十分休憩したところで、メルの力を借りたいんだ」

「それは良いけど……お兄ちゃん。メルの――金の精霊は魔力の消費が激しいの。また倒れたりしない?」

 メルが俺を心配そうに見上げてくるが、問題ないと否定しようとしたところで、リアが驚きの表情と共に割り込んでくる。

「えっ!? カイ君、今の話は本当っ!? 魔力枯渇を起こしたのっ!?」

「起こしてないよ。ちょっと立ち眩みがした程度だってば」

「本当!? 実は無理してない!? 今日はもう、私と一緒に寝る?」

「いや、大丈夫だから。それに、試してみたいことが沢山あるんだ」

「うーん。カイ君がそう言うなら仕方ないけど、無理はしちゃダメだからね? 魔力を使い過ぎて魔力枯渇になっちゃったら、身体の中で毒が作り出されちゃって、場合によっては命の危険を伴うの。……念のため、毒消し草を飲んでおく? お姉ちゃん、出せるよ?」

 毒消し草がどんなのかは知らないけど、何となく美味しく無さそうだし、魔力枯渇も起こしていないと思うので丁重に断り、今後は無理をしないことを約束する。

 というわけで、リアに無理をしないと言った手前、今日はメルの力だけを確認して、もう一つは明日確認することにした。

「こほん。えーっと、話を戻すけど、さっき水浴びでしっかり休んだから大丈夫だと思う。それで、メルに出してもらいたい物があるんだよ」

「今度はどんなの?」

「包丁かナイフのどちらかをお願いしたいんだけど、わかる?」

「うん。どっちもわかるよー。でも、出来るだけ小さい方が良いんじゃないかなー? リアさんもいるし」

「そうだね。じゃあ、ペティナイフってわかるかな? 小さなナイフなんだけど」