どう考えても、木の精霊や水の精霊と火って相性が悪いよね?
最低限の火を使うとしても、出来るだけリアから離れた場所にするとか、何かしら考えないといけなさそうだ。
リアが苦手だという金の精霊のメルを連れてきてしまったばかりだし、火の話は一旦置いといて、まずは風呂ではなくて水浴びがしたいということにしておこうか。
「えっと、今朝はディーネに水をシャワーみたいに出してもらって頭を洗ったでしょ? 出来れば、水浴びがしたくて、俺が全身浸かれるような浴槽が欲しいんだけど、どうかな?」
「なるほど。それなら、リアお姉ちゃんが作ってあげるよ」
「え!? そんなのまで作れるの!?」
「うん! でも、カイ君はお風呂に入りたいって言っていなかったっけ?」
「そうなんだけど、リアもディーネも、火は苦手そうかなって思って」
あえて風呂の話を出さないようにしたんだけど、遺跡へ出発する前にディーネと話していたことをリアがしっかり聞いていて、先に言われてしまった。
だけど、火についてはリアとディーネから、俺の予想とは違う答えが返ってくる。
「んー、リアは火の精霊は苦手じゃないよ?」
「え? そうなの? でも、木は火を嫌いそうなイメージがあるんだけど」
「そんなことないよ。というか、実際木はなかなか燃えないよ?」
「でも、リアに言って良いかわからないけど、薪を燃やしたりするよ?」
「それは既に死んじゃった木だからね。リアが宿っている木みたいに、生きている木はそう簡単に燃えないんだよ」
なるほど、そういうことか。確かに、よっぽどすごい火じゃないと、生木は燃えないな。
それに、薪もかなり乾燥させてから使っているか。
「パパー! ディーネもだいじょうぶでち。だけど、ひのせいれいさんが、ディーネをにがてかもでち」
「火の精霊の方が、水の精霊を苦手だっていうのは、俺もイメージ通りかな」
「そうでち。それと、ディーネじゃなくて、メルがひのせいれいをにがてだとおもうでち」
「えぇっ!? じゃあ、来てもらったばかりのメルに、苦手な火の精霊の話はしない方が良いだろうし、やっぱりお風呂ではなくて、水浴びかな」
しかし、ディーネに教えてもらった、金の精霊のメルが火の精霊を苦手だというのは、意外だったけど、金属もいろんな種類があるし、少しの熱で溶けたりする金属があったりするのかも。
そういう意味では、木の精霊よりも金の精霊の方が、火が苦手というのもわかるかもしれない。
なので、先程リアやディーネに話した通り、水浴びが出来るように、浴槽を作ってもらうために、俺の――日本の浴槽のイメージをリアに伝える。
「じゃあ、カイ君から聞いたイメージで、作るね。えーいっ!」
リアが手をかざすと、少し離れた場所に、畳一畳分くらいの板が現れる。
そこから、木材がぴったりと組まれて行き、俺が思い描いていた通りの浴槽になった。
ただ、イメージはヒノキ風呂だったのだが、何の木で出来ているかまではわからないが。
「カイ君。あんな感じでどうかな?」
「リア、ありがとう。俺が思っていたイメージ通りの出来だよ」