幼い女の子と考えれば、長い距離を歩けばこうなるのは当然か。
日本だと、こういう場合は……あれかな?
「ごめんね、メル。おんぶでも大丈夫?」
「うん。お兄ちゃん、ありがとう」
「えぇー、ずるいでち! じゃあ、ディーネもだっこするでち!」
いや、メルは頑張って歩いて来たけど、ディーネはふわふわ浮いているよね?
そんなことが頭をよぎったけど、空を飛ぶのも大変なのかもしれないので、背中にメルを背負い、首にディーネがしがみついた状態で、リアのもとへと戻って来た。
「カイ君! 無事で良かった! って、ディーネちゃんは何をしているの?」
「えへへー。だっこでち……って、それより、パパがきんのせいれいをよんだでち! メル、きのせいれいの、リアでち」
ディーネがメルに声を掛けるが……反応がないな。
どうしたんだろうと思っていると、ディーネがメルを覗き込む。
「あ……ねちゃってるでち」
「メルの身長だと、あの距離は遠かったみたいだね」
「メルのしんちょうは、あんまりパパとかわらないでちよ?」
いやいや、さすがに小学校低学年くらいの女の子よりは、俺の方が大きいから。
まぁとはいえ、俺も小学生くらいの身長だから、ディーネの言うことももっともだし、メルを軽々運ぶことも出来ていないんだけどさ。
「あ……金の精霊さんは、眠っているんだ。良かった……」
「ん? リア?」
「あはは……実は、木の精霊と金の精霊は相性が悪いんだよね」
そう言って、リアが恐る恐る俺の背中に目を向ける。
なるほど。ディーネから金の精霊の話が出た時から、何か様子がおかしいと思っていたけど、精霊同士の相性があるのか。
「あ、でも……メルちゃんみたいに、まだ幼い子なら大丈夫かも」
「そっか。だけど、そうするとメルがリアのことを怖がったりするの?」
「それは大丈夫だと思うよ。木の精霊は金属が苦手だけど、金の精霊が木を苦手ってことはないから」
リアによると、木と金は相性が悪いけど、水と金は相性が良いらしく……精霊にもいろいろと事情があるみたいだ。
「ところで、メルに頼んで、いくつか金属で物を作ってもらおうと思っていたんだけど、あんまりやらない方が良かったりするのかな?」
「少しくらいなら大丈夫だよ。あんまり沢山出されると、少し辛いかもだけど」
「わかった。その辺りは、事前にリアとメルに相談させてもらうね」
「あ、でも、カイ君が必要だと思う物があるなら、構わないよ。元々、何か欲しい物があって、メルちゃんを探しに行ったんだよね?」
「まぁ、そうなんだけど……」
今更ながらに考えてみると、元はお風呂に入りたいっていう話だったんだけど、お湯を沸かそうと思ったら、火を点ける必要がある。