「いえ、その通りです。厳密に言うと、死後の世界というより、天国と現世の境目ですが」

「し、思考を読まれたっ!?」

「あなたには変な女だと思われていますが、これでも私は女神なので」

 思ったことが全部筒抜けになっている!?

 というか、女神様はちょっと怒ってない? 変な女って思ったから!?

 いや、あなたは既に死んでいる……なんて言われたら、大半の人はそう思うでしょ!?

「……こほん。本題に移りましょう。あなたが前世で作った、困っている人の声を集め、弱者を救うべき者へ伝えるアプリを別の神が高く評価しています」

「あー、仕事とは関係無しに趣味で作ったアレですか」

「えぇ。その神は現世の未来を視る力を持っていて、あなたの作ったアプリが今後大勢の人々を救うことになるのだそうです」

 良かった。世界中に困っている人が大勢いるのは知っているけれど、俺一人の力で全員を救うことなんて出来ないし、お金も時間も無い。

 そこで、唯一自分の特技だと言えるプログラミング能力を活かして、あるスマホアプリを作ったんだけど……そっか。あのアプリを作った意味はちゃんとあったんだ。

「残念ながら、あのアプリが人々を救うところをあなた自身が見ることは出来ませんでしたが、その功績を称えて、次の人生を豊かにしてあげて欲しいと、転生を司る私のところへ依頼があったのです」

「なるほど。次の人生を豊かにという話ですが、もう一度日本人として転生も出来たりするんですか?」

「残念ながら、生まれる世界は決まっているので、変更出来ません。ですが、その世界の中であれば、生まれる場所や、授かるスキルを選ぶことが出来ます」

「スキルっていうと、よくゲームやラノベに出てくる、あのスキルですか?」

「えぇ。あなたが転生する世界は、科学の代わりに魔法が発達していて、十歳になったら神からスキルという特別な技能を授かることができます」

 転生先について詳しく話を聞くと、魔物や精霊などが存在する世界で、精霊の力を借りて魔法を発動することが出来るのだとか。例えば、風の精霊の力を借りて空を飛んだり、水の精霊の力を借りて砂漠で飲み水を確保したりと。

 あと、スキルは一人につき一つしか授からないものの、人生を左右する程の影響を持つらしい。

「授かるスキルは前世の行いによって決まるのですが、戦闘に関するスキルや魔法に関するスキル、商売や学問に、生産や生活など、多岐に渡ります。あなたは、どういったスキルを得たいか、希望などはありますか? 先程お伝えした功績もありますし、ある程度融通を利かせますよ」

「希望と言われても、どんなスキルがあるかわからないので何とも言えませんが、やっぱり魔法ですかね」

「あなたの前世に無い技能ですから、憧れますよね。わかりました。では、魔法に関するスキルで、あなたに適したものを私が見繕っておきましょう。転生ですので、零歳から人生がやり直しとなりますが、レアなスキルを授けますので、十歳の誕生日を楽しみにしておいてください」

 魔法に関するスキルか。

 現時点では何かわからないけれど、せっかく魔法が存在する世界で生きていくのに、魔法が使えないという事態にはならなさそうだ。