片方の盾の縁の部分を持ちながら呼びかけると、ディーネの時と同じように、金属の部分から金髪の女の子が現れる。

 六歳か七歳といった感じだろうか。小学校低学年くらいで、大きなリボンで結われたサラサラの金髪が腰まで伸びる、ちょっとおしゃれな子供服姿の女の子だ。

「メルたんのこと、呼んだ?」

「メルたん? ……えっと、俺はカイっていうんだけど、君に力を貸してもらいたいんだ」

「え……メルたんで、良いの!? メルたんは、金の精霊なんだよ?」

「もちろん! 金の精霊である君の力が必要なんだ」

「わかった! メルたんで良ければ、協力するよ! あ、メルたんのことは、メルって呼んでも良いし、メルたんでも良いからね」

 やった! 無事に金の精霊のメルから力を借りられるようになった。後は、リアのところへ戻って、頑張って火を起こせば風呂に入れる!

 やっぱり元日本人としては、温かい風呂に入りたいからね。

 それから、包丁やフライパンを作ってもらえば、料理も出来る。

 ちょっと生活レベルが上がるかもと、いろいろ考えている内に、先程の魔法陣に込められた魔力が尽きたようで、水が止まっていた。

 なので、残ったもう一つの盾を手にして、それ程高くない横穴から階段へ降りる。

 おそらくディーネと同じで、金属が存在しないとメルが消えてしまうと考えたので、そのための盾なのだが、何かあった時に役立つかもしれないからね。

 そんなことを考えていると、

「ま、待って。お兄ちゃん……降ろしてー!」

 メルが降りられないと言って、涙目になっている。

 ディーネが空を飛べるから失念していたけど、リアも空を飛んだり出来ないもんな。

 穴の縁に腰掛けているメルに腕を伸ばし、腰を抱きかかえて……お、重いっ!

 いや、見た目が幼いから、軽いと思い込んでいただけで、まったく持てない重さではないんだ。軽いと思い込んでいたせいで、ものすごく重いと感じてしまい……気合でメルをゆっくりと階段へ降ろす。

 残念ながら、俺の身体が子供になっているからか、それに応じて力も弱くなっているみたいだ。

「お、お兄ちゃん。メルたん……お、重かった?」

「いや、まったく。せっかく来てくれたメルに万が一でも怪我をさせるわけにはいかないから、慎重になっただけだよ」

「そっか。ありがとう」

 うん。相手は精霊とはいえ、見た目は女の子だし、口が裂けても重いなんて言えないよね。

 そんなことを考えつつ、メルを連れて濡れた階段を上がっていき、三枚のパネルのところは、しっかり屈んで階段の外へ。

「ディーネ。この階段は、一応隠しておいた方が良いのかな?」

「うーん。じゃあ、メルのちからを、かりるでち?」

「そうだね。そうしようか」

 そこそこ大きな穴ではあるけれど、あれだけ水を出しても平気なのだから、メルの力を使っても気絶したりはしないだろう。