ディーネに詳しく聞いてみると、木の精霊とは違い、水の精霊は空気中にふよふよ漂っている者もいるらしい。
それで、ディーネが俺に宿る前は、この辺りで普通に水の精霊同士でしゃべることも多く、遺跡の存在も知っているのだとか。
「そっか。それでディーネは、いろんなことを知っているんだね」
「そうでち! けど、ひとつ……さっきのリアのはなしで、わからないことがあるでち」
「そうなの? リアの話というと……冬緑草のこと?」
「ちがうでち。きんのせいれいのことでち。リアもしっているはずなのに、どうしてしらないといったのかが、わからないでち」
俺が金属の精霊がいないかと聞いた時に、ディーネが金の精霊がいると教えてくれた時の話か。
確かにあの時、リアは知らないと言っていたが、精霊同士どんな精霊がいるか、当然知っているはずだ……というのがディーネの意見か。
ただディーネは俺に宿る前は、他の水の精霊と話が出来ていたみたいだけど、リアは誰とも話が出来なかったらしいからな。その違いではないだろうか。
なので、ディーネの疑問には直接リアへ聞くしかないという結論に至り、緩やかな坂道を降りて遺跡の中へ。
「この遺跡は、いつ頃出来た遺跡なんだろう」
「わからないでち。けど、かなりふるいとおもうでち」
「まぁ遺跡って呼ぶくらいだもんね」
日本だと、古いものなら数万年前だろうし、数百年前のものでも遺跡と呼ぶだろうし……うん、俺は別に学者とかではないから、わからないな。
そんなことを考えながら、周囲に目を凝らしながら遺跡の中を進んで行く。
とはいえ、遺跡と言っても入り組んだ壁や通路などはなく、坂を下りた後は、ただ平らな場所が広がっていた。
この遺跡がいつ頃の物かはわからないけれど、既に調査は終わっているのだろう。
そのため、石は時々転がっているのだが、金属が落ちている感じはしない。
「ディーネ。この遺跡のどの辺りに金属があるかわかる?」
「それはむりでち。でも、むこうから、へんなかんじはするでち」
向こうから変な感じがするというディーネの言葉を頼りに、言われた方向へ進んで行くと、何も無いところでディーネがストップをかける。
「このした……なにかあるでち」
「うーん。見た所、ただの土にしか見えないけど……そうだ。ここで水を流してみよう。何かわかるかもしれない」
「わかったでち! たきでち!」
えっ!? 滝!?
止めようと思った時には、幅こそ小さいけれど、何も無い空中から激しく水が落下していく、文字通りの滝が生み出されてしまった。
これ……それなりの水量だと思うんだけど、どれくらい魔力を消費するのだろうか。
安全なリアの傍ではなく、こんな場所で倒れたりするのは勘弁してもらいたいのだが。