ディーネ曰く、俺の魔力は多いらしい。
ということは、毎日風呂に入れるくらいの水を出したり出来るのだろうか。とはいえ、水風呂にしか入れないが。
今はそれで良いとしても、今後を考えると……仮に四季がある場所だとしたら、冬になれば温かい風呂に入りたくなるだろう。
そう考えると、お湯を沸かしたり、暖を取ったり、調理をしたりと、次に必要な物は火と鍋などの調理器具だろうか。
火は、リアに出してもらった木を使えば、自分で起こせそうな気がするから、努力ではどうにもならない調理器具――鉄を手に入れたい。
「リア。一つ教えて欲しいんだけど、鉄の精霊というか、何か金属を司る精霊っているのか?」
「え……ど、どうかなー。それは私も知らないかなー」
「そうなのか。困ったな」
なぜかリアの目が泳いでいるのはさておき、木の精霊がいるなら金属の精霊もいると思ったけど、そう上手くはいかないみたいだ。
さすがに木の鍋でお湯を沸かしたりは出来なさそうだから、俺が出来そうなことと言えば、ここの土を掘って、粘土で土鍋を作ったりすることだろうか。
ただ、粘土を焼いて土鍋を作るとなると、かなりの火力が要りそうだから、窯を作ったりしないといけないのかも。
どうやったら作れるのかと考えていると、ディーネが嬉しそうに手を挙げる。
「はいはーい! パパー! ディーネ、しってるでち! きんのせいれいがいるでち!」
「金の精霊っていうのがいるの!?」
「うんっ! むこーに、いせきがあるから、そこできんぞくをみつけるでち! それから、パパがよびかけたら、きっとでてきてくれるでちー!」
「そうなんだ! ディーネ、ありがとう!」
「えへへー! ほめてほしーでち!」
嬉しそうにドヤ顔を決めるディーネの頭を撫でながら、早速教えてもらった方角へ行ってみることにしたのだが、リアが悲しそうな表情を浮かべながら、待ったをかけてくる。
「……カイ君。本当に行っちゃうの?」
「少しだけね。何かしらの金属を見つけたら、すぐに戻って来るよ」
「あ、あのね。私はここから離れられないの。だから、一緒について行くことが出来なくて……カイ君にもしも何かあったらと思うと、不安なの」
リアは、もしも俺に万が一のことがあった場合に、またひとりぼっちに戻ってしまうことを心配しているのか。
だけど、俺だって死にたくはないし、この地ではリアのお世話にならないと生きて行けないから、戻って来るしかない。それに何より、こうして俺を心配してくれているリアを悲しませたくないからね。
「大丈夫だよ。危ないと思ったら諦めて引き返して来るし、この辺りには危険な動物とかはいないっていう話だよね?」
「そうだけど……じゃあ、せめてこれを持って行って」
そう言って、リアが右手をかざすと、地面から見たことのない植物が生えてきた。