「これだよ。カイ君が眠っている間に、作ってみたの」

 改めて見てみると、リアの手にはハンカチっぽい小さな四角い布が握られているのだが、植物しか出せないと言っていたから、麻や綿といった植物系の布なのだろう。

 タオルは贅沢を言い過ぎだろうと口には出さず、ディーネにお願いして頭も洗ってみた。

「ふぅ。生き返った気持ちだよ」

「パパは、しんでたでち?」

「いや、そういうわけではなくて、お風呂が好き……って、俺のことをパパって呼ぶの!?」

「そうでち。ディーネは、パパのよびかけで、ぐげんかしたでち。だから、パパでち」

 えぇー。いや、日本だと子供がいてもおかしくない年齢ではあったけど、いきなりパパと呼ばれるのは……とはいえ、仕方ないか。

「えーっと、まぁ俺のことは好きに呼んでくれていいよ」

「わかったでち! でも、ディーネはパパのすきな、おゆはだせないでち」

「いやいや、さっき頭を洗ったシャワーでも十分だよ! ディーネには本当に感謝しているからさ」

 ディーネがお湯を出せないと言って、悲しそうにしてしまったので、慌ててフォローすることに。

 ディーネは見た目通り幼いようなので、気を付けないと……と思っていると、リアが再び俺の頭を拭きはじめたんだけど、何故か頬を膨らませている。

「カイ君が、ディーネちゃんとばかりお喋りして、私の相手をしてくれなーい!」

「えっ!? いや、水を出してくれたことの感謝を……」

「私だって、カイ君のためにいろんなことをしてるもん!」

 えーっと、リアは見た目こそ女子高生だけど、中身は子供だったか。

 実際、感謝してもしたりないので、拗ねているリアを宥め、話を逸らす。

「そういえば、どうしてディーネは幼いというか、身体が小さいの?」

「それは、ディーネちゃんを呼び出す時に使ったお水が、少ししか無かったからかな」

「じゃあ、もしも川や湖でディーネを呼び出していたら、リアみたいな大人の女性が現れていたってこと?」

「そうそう。私みたいに、大人で綺麗な人が現れていたかもね」

 う、うーん。リアは中身も大人だと助かるんだけどな。

「ところで、今のところはディーネに水を出してもらっても、倒れたりするような感じはないんだけど、俺の魔力っていうのは減っているの?」

「減っているはずよ。そうでないと、ディーネちゃんが力を使えないはずだから」

 リアは俺から魔力が減っているはずだと言うけれど、体調的には何の変化も無いんだよね。

 一度、どれくらいまでディーネの力を使ったら倒れてしまうのか、確認しておくべきだろうか。

 とはいえ、無駄に大量の水を出して、この辺りが水浸しになったり、リアが宿っているという木に変な影響があったりしても困るな。

「んーと、パパにはすっごく、たくさんのまりょくがあるでち」

「そうなの?」

「ディーネは、パパからまりょくをもらっているから、わかるでち。ふつうのにんげんぞくとは、くらべものにならないくらい、いーっぱい、いーっぱいあるでち」