「はいでち! ディーネっていうでち!」

「えっと、お水を出すことは出来るのかな?」

「できるでち! じゃあ、まりょくをもらっても、よいでち?」

 ディーネと名乗る幼女が、水を出せると言っているんだけど、魔力をもらうとはどういうことだろうか?

 相手は子供みたいに幼い精霊みたいだし、ちょっと不安なのでリアに目を向け、説明してもらうことに。

「あのね。精霊の在り方には二種類あるの。一つは、精霊が何かに宿る場合。これは、私みたいに、この木が持っている魔力を使って、植物を生み出したりしているの」

「そうなんだ。この木……実はすごいんだね」

「えぇ、そうよ。もう何十年と樹齢を重ねているもん。それと、もう一つが、今回のディーネちゃんみたいに、人間族に呼ばれた場合ね。この場合は、ディーネちゃんを呼んだカイ君の魔力を使って、精霊の力を使うのよ」

 なるほど。リアがこの木に宿っているように、ディーネが呼びだした俺に宿っていると考えれば良いのか。

「じゃあ、ディーネが水を出すと、俺が持っている魔力が減るってことだと思うんだけど……俺にはどれくらい魔力があるの?」

「それは、実際に使ってみないとわからないかな。ディーネちゃんが使う力を見れば、大体の消費魔力がわかるから、カイ君が魔力を使い果たして倒れたら、それがカイ君の持っている魔力の量ね」

「えっ!? 魔力を使い果たしたら倒れるの!?」

「うん。だけど、人間族は休めば魔力が回復するから心配無用よ」

 リアの説明を聞いていると、日本でやっていたRPGみたいなイメージを抱いたけど、それで良いのかな?

 ディーネが魔法を使う度に俺のマジックポイントが減って、寝れば全快復するって感じで。

 ただ、ゲームだとマジックポイントが足りないと魔法が使えなくなるけど、ここでは倒れてしまうらしいが。

「ディーネ。じゃあ、俺のこの両手一杯くらいのお水を出してくれる?」

「わかったでち! えーいでちー!」

 ディーネの掛け声と共に、俺の掌に水が突然出現したので、そのまま顔を洗い……ふぅ。スッキリした!

「ディーネ、ありがとう。助かったよ」

「どういたしましてでち」

「もうちょっと頼んでも大丈夫?」

「まかせるでちー!」

 俺の顔の前で、ふよふよと浮かんでいるディーネが、嬉しそうに胸を張る。

 いわゆるドヤ顔なのだが、幼稚園児くらいなので、微笑ましいというか、可愛らしい。

 そんなことを考えていると、ディーネにゴシゴシと顔を拭かれる。

「カイ君、お顔を拭きましょうね」

「んっ! ……り、リア。さすがにそれくらいは自分で出来る……って、今のは何で拭いたの?」