「俺の力?」

 なんだろうか。

 この状況で俺の力というのだから、おそらく魔法で水を出すとか、そういうことだと思うのだが、俺はまだスキルを授かっていないはずだ。

 女神様は十歳になったら魔法に関するスキルをくれると言っていたけど、実は既に十歳を過ぎていて、魔法のスキルを持っていたりするのだろうか。

「リア。それってもしかして、実は俺が魔法を使えるってこと?」

「そうなの? それならカイ君の魔法で解決するね」

「あ、違うんだ。話の腰を折ってごめん。さっき言っていた俺の力を使って水を出す方法を教えてくれないかな?」

 そう言うと、俺を見ていたリアが俺をジッと見つめてくる。

 よくわからないが、リアに任せようと思い、何も言わずに俺もリアを見つめていると、しばらくしてリアがようやく口を開く。

「うん! やっぱりカイ君はかわいいね!」

「あの……何の話? 水を出すために、俺の何かを調べていたんじゃないの?」

「え? カイ君が可愛いなって思って見ていただけだよ?」

「いや、水……水が欲しいんです」

「ご、ごめんね? じゃあ、そこで水を受け止めるように、掌を出して待っていて」

 リアに言われた通り両手を前に突き出すと、一本の蔓が木の上から垂れ下がり、俺の掌の少し上で止まった。

 もしかして、ここから水道の蛇口みたいに水が出たりするのだろうか。

 そんなことを期待しながら、両手で水を受け止めるように待っていると、

――ぴちょん――

 一滴の水が俺の掌に……って、これで終わりっ!?

「あの、リア。さすがにこの水滴では……」

「待って! カイ君、そのまま手を動かさないでね。この木に付いていたその朝露を媒体として、水の精霊ウンディーネを呼ぶの」

「水の精霊!?」

「うん! 私は精霊だから他の精霊に干渉出来ないけど、カイ君は人間族だから、精霊のルールに縛られずに、精霊を呼ぶことが出来るの。そのお水を通して、ウンディーネを呼んでみて」

 驚いてリアの顔を見ると、俺の顔を見ながら、ゆっくりと頷かれる。

 俺なら出来る……ということだろうか。

 でも呼びかけるって、どうすれば良いんだ? 精霊語が日本語と同じおかげで、リアと普通に話が出来ているし、同じように話し掛ければ良いのか?

「えっと、ウンディーネさん。出てきてください」

 間違っていたらリアが指摘してくれるだろうと信じ、掌の上の水滴に向かって話し掛けてみると、その水滴から二歳か三歳くらいに見える青髪の女の子が出て来て、宙に浮かんだ。

 この、子供服を着ている幼女が水の精霊?

「んー、よんだでち?」

「えっと、君が水の精霊のウンディーネ?」