リアが俺を抱きしめたまま、枝と枝の間に寝転んでいるのだが……何か緑色の網みたいなのがあるな。

「あ! これは、蔓か」

「そういうこと! この枝まで上がって来られたのも、この蔓に運んでもらったんだよ」

 太い蔓がしっかり編み込まれていて、かなり広めのハンモックのようになっている。

 なるほど。確かにこれなら落ちる心配はなさそうだ。

 ただ、その網から地面まで、マンションの三階くらいの高さがありそうなので、万が一落ちたりしたら、痛いでは済まない。

 その上リアが少し動く度に、蔓からギシギシと音が鳴るので、恐怖で眠れないのではなかろうか。

 そう思っていたのだが、

「じゃあ、カイ君。おやすみなさーい!」

「うん、おやすみ」

 リアに抱きしめられていると、なぜだかものすごく心が落ち着いて……いつの間にかぐっすり眠っていた。


「カイ君、朝だよ。おはよー!」

 翌朝。可愛らしい女の子の声で起こされると、顔が柔らかい何かに包まれていた。

 しばらくの間、これは何だろうと考え……自分が異世界へ転生したことと、この何かがリアの胸だと気付き、慌てて身体を起こす。

「あ、起きたね。朝食の準備は出来てるよ」

 どうやらリアは、眠る俺を抱きかかえたまま木の下へ降り、サラダとフルーツの盛り合わせに、ココナッツミルクという豪華過ぎる朝食の用意を済ませてくれていたらしい。

 昨日と同じく、リアの膝の上に座らされ、雛鳥の如く食事を運ばれる。

 うーん。子供扱いを控えて欲しいと伝えたのだが、もしかして忘れられているのだろうか。

 食事後にそれとなく伝え、顔を洗おうとして、この異世界生活で最初の問題に直面する。

「リア。顔を洗いたいんだけど、お水って出せるのかな?」

「んー、ココナッツミルクじゃダメ?」

「出来れば、普通の水が嬉しいかな」

「そっか。うーん……どうしよう」

 水が欲しいと言ったら、リアが困り始めた。

 食べ物から寝床まで、リアの世話になりっぱなしな俺が言うのもどうかと思うけど、ココナッツミルクで顔を洗ったり、汗を流したり……いや、さすがにキツいな。

 これはやはり、多少無理をしてでも、川や泉なんかを探しに行くべきだろうか。

「えっと、やっぱり水ってココナッツミルクしか出なかったりするの!?」

「ううん。オレンジジュースとか、アップルジュースとかも出せるよ?」

「いや、どっちにしても顔を洗ったりするのには適さないかな」

「一応、他にもお水を出す手段はあるんだけど、これは私の力ではなくて、カイ君の力を使うことになるんだよね」