優しくぎゅっと抱きしめてくれた桃李くん。

「泣かないで、優衣花。優衣花が泣いてると心が痛くなって、めちゃくちゃ苦しくなる」

 桃李くんが耳元で声を震わせながら呟いた。

「ごめんね、桃李くん。このドレスもすごく可愛くて……嬉しすぎて、いっぱいありがとうって気持ちが溢れてきて。どうしよう、涙が止まらないの」

 桃李くんが優しく私の頭をなでてくれた。なでられた感触、すごく安心する。

「桃李くん、本当にありがとう」
「本当はあの漫画のドレスみたいに、もっと細かいキラキラのとかつけたりしたかったんだけど難しくて。もう一回、リベンジさせて?」
「リベンジ?」
「優衣花に好きな人が出来て、将来もしも結婚することになったら、優衣花のドレスまた作りたい」
「……」
「いや、作りたくない」
「えっ?」

 どういうことだろう……。
 もう、私のドレスを作るのが嫌だってこと?

 桃李くんが顔を上げて、私を真剣に見つめてきた。

「小さい時からずっと、俺のお嫁さんになってほしいって思ってたんだと思う」

「えっ?」

「優衣花、将来俺と結婚してほしい」

「……」

 突然の予想外な言葉。

「他のやつと優衣花が結婚するとか、考えるだけで無理。他の人と結婚するならドレス作れないわ」

 白い紫陽花に囲まれ、ウエディングドレスを着て。すごくロマンチックなこの状況の中で、ずっと好きだった人から告白された。

 夢みたいだった。
 夢、かな?

 例え夢だとしても、返事をしないといけないよね。