“今日はごめん。でも、気になる人に出会えたなら良かった。こちらこそ、今までありがとう”
“俺は、今現在この場には存在していません。でも桜さんの幸せを心から願っています”
そして、
“出会ってくれてありがとう”
その一言を最後に、ケイタさんからの連絡は途絶えた。そうか……やっぱり、彼はAIだったのだ。
ショックだった。酷いと思った。でも、最後の言葉は、私にとってとても嬉しい言葉だった。例え相手がAIだったとしても、私の幸せを願ってくれて、出会えた事に感謝してくれる、そんなやり取りがここにあった事は事実だったから。
“ありがとう”
最後にその言葉を送って、私はアプリを退会した。
ケイタさんのおかげで出会えた、もう一人のケイタさん。彼が運命の人かどうかは分からないけれど、今はもうどちらでも良かった。運命の人じゃなくても、私はまた彼に会いたい。その気持ちが一番大切だったから。
来年はきっと、満開の桜の木の下に私と彼が居るのだろう。それが今からとても楽しみだった。
……———ハッと、意識が戻る。辺りを見渡すとそこは先程彼と訪れた施設で、あぁ、終わったのかとほっと一息ついた。
「桜ちゃん、お疲れ様」
やって来た彼は、大丈夫?と、私の心配をしてくれる。それに大丈夫だと答えて、係員の指示に従って装置を外した。