「待たされるのも辛いですよね」

 私が言うと、彼はハハッと乾いた笑い声をあげる。

「本当、何度言っても直んないし、仕舞いには迎えに来いとか言い出す始末。これが最後だって決めてるんです。流石にもう無理」

「そうですか……今回もダメそうなんですか?」

「ダメでしょうね。最後だって言ったのに時間通り来れないなんて、人と人との信用問題として無理」

「……」

 人と人との信用問題。そう言われて何も返せなかった。本当にそうだと思った。なのに私は何でケイタさんを信じたい気持ちがあるのだろう。

「俺はもう帰ります。そっちは?」

「……」

——『ぜひ、そうなれたらなと思います』

 あの時のケイタさんの言葉が蘇る。彼が運命の人になりたいと言ってくれたから、私は彼がそうだと信じて、だから今も、彼が運命だと信じたくてここに居る。もう、藁にもすがるような思いだった。

「……来るまで、待ってみます」

「そうですか。あんま無理しない方がいいですよ」

 それじゃと、改札口へ消えていく彼の背中を見送った。取り残された様な寂しさがあったけれど、私はまだ帰らない。だって、今日は最後まで待つと決めたから。