“ごめん。本当に申し訳無いんだけど、また来週末同じ時間に来てもらう事は可能でしょうか”
次の約束を取り付ける彼。自分から言い出すって事は、会ってくれる気はあるって事? それとも、私は何か、騙されてる?
“分かったよ。また同じ時間で”
そんな返事をしながら、頭の中では何か可笑しいともう一人の私が警告する。でも本当に言った通りの事があったのかもしれないと、信じたいと思っている私もいる。
……確かめよう。次こそ最後まで待って、連絡があったら今いるよって言ってやろう。そしたら向こうだって無視する訳にもいかないはず。
それから来週末まではまた今まで通り、たわいのない会話のようなメッセージのやり取りがあって、何事も無いまま、その日はやってきた。
“今着いたよ。白いシャツに水色のカバンです。待ってます”
今回は前回よりカジュアルな服装にした。長期戦を予期しての事だった。ケイタさんからは分かりましたの返事があったけど、今回はどうなるだろう。
今日の時計台の前も待ち合わせ中らしき人達で賑わっている。調べてみると、この近くに桜の木が沢山植えられた綺麗な公園があるみたいで、そこが結構有名らしい。満開の時期を過ぎたといっても、まだまだ散り際の桜を観に来る人は多いようだった。
もしかしてそこへ行く為にここで待ち合わせなのかなと思うと、また来ないのではと疑いつつも、期待で心がそわそわした。何故なら、私にとって桜は運命の象徴だったから。
「!」
あれ? この人は確か……。
私の隣にやって来た一人の男性。見覚えがあるなと思ったら、前回、隣で一緒に待ちぼうけをくらっていた彼だった。スマホを片手に私の隣に佇んでいるという事は、この人もまた待ち合わせ? こんな偶然ある?
……もしかして、やっぱりケイタさんなんじゃない?