「あなたは、運命の人を信じますか?」 

 私にとってこれは一番大事な質問だった。だって私は信じている。きっといつか、運命の人が私の前に現れて、その人と幸せな人生を添い遂げるのだと。そんな未来がきっと私には待っているのだと。

「……え?」

 しかし、向かい側に座る彼は目を丸くした後、気まずそうに視線を逸らすと一言。

「……君、そういう感じ?」

 はい、これはおしまいの合図。こうして私と彼のやりとりは途切れて、帰りの電車でお断りの連絡が来た。いやいや別に、こっちだってお断りですし。

 “運命の人に出会えます”そんなキャッチフレーズに惹かれて登録したマッチングアプリ。今の所一人も運命を信じてる人に出会えて無いのはなぜ?

 物心ついてから今日までずっと、私の目標は運命の人と結婚する事。それは二十七歳の今でも変わっていなかった。若い頃は付き合う度に相手を運命の人だと信じる事が出来たけれど、そろそろ分かる。信じて裏切られたらそろそろ私のメンタルが追いつかなくなるという事に。

 ここで出会って付き合ったならもう結婚したいし、いつもみたいに運命とか言い出した私に、「怖っ」とか、「重っ」とか、「無理」とか言い出すような人に割く時間はない。
 次が大事な二十代最後のチャンスだと思っている。二十代で結婚したいとずっと思ってきたのだ。というか、昔の私からすればもう結婚しているはずだったのに。これはもう身の周りで探していたら間に合わないかもと思い当たった私が登録したのが、この運命の人に出会えるはずのマッチングアプリだった。