「ママ、お星さまとクマちゃん、色んなところに旅行に行ってるんだね。これ、東京だよね」
優子のタブレットを手にし、スカイツリーをバックにした写真を見てミカは喜んでいた。
「本当に色んなところに行っているね」
「お友達もたくさんできたんだね。色んな人も写ってる。パパにも見せてあげた?」
「もちろん、パパも見てるわよ」
看護師からアドバイスをもらった後、夫の秀則に相談した。ミカが望むなら叶えてやろうと、ミカが寝ている間にクマのぬいぐるみを持ち出して、知り合いに事情を話した後、すぐに事が始まった。
『クマのぬいぐるみが旅行をしています。見かけたら写真を撮って下さい』
ツイッターのアカウントを作り、ミカチャレンジとハッシュタグを作った。
最初は知り合いの友達から友達へと信用が置ける人たちが手渡してクマのぬいぐるみを旅行させてくれた。写真をアップする度、次第にそれは広がってフォロワー数が毎日増えていく。
軌道に乗ってそれはあっという間に広がっていった。
ミカは毎日、アップされる写真を見るのを楽しみにするようになった。
そのお陰で元気が出て、しっかりとご飯を食べ、車椅子で外に出られるようにまでなっていた。
「ミカちゃん、最近とても顔色がよくなって、元気になったね。なんかいいことがあったのかな?」
医者から言われると、ミカは思いっきり笑顔になった。
「先生、あのね、お星さまとクマちゃんが旅行して写真をいっぱい撮ってきてくれるの。ミカそれを見るのがとても楽しいの」
「そうか。それはよかったね」
事情を知っている医者も一緒になって喜んでくれた。
看護師がひらめいたアイデアのお陰で、それがここまで広がって効果がでるとは思わなくて、優子はとても感謝していた。
みんなの善意のお陰で、クマのぬいぐるみは順調に旅行が続いている。
これで活気のある毎日が送れると思っていた時だった。新しくアップされた画像を見てミカは首を傾げる。
「ねぇ、ママ、これ、クマちゃん? ちょっと違うんじゃない?」
ハッシュタグがついているけど、アップされた画像に写るクマはミカのものじゃなかった。色は似ているが、トレードマークの耳のボタンもなく作りが違う。手足が動かないクマのぬいぐるみだった。
流行りものに乗っかって、真似をする人も中にはいる。この場合どうしたらいいのだろうかと優子が戸惑っていると、そういう偽物の情報には誰かが指摘するコメントがついていた。
――これ、偽物ですよね。やめて下さい。ミカちゃんのクマはこんな安物じゃないですよ。
――こんなことしていいと思ってるんですか。ルール違反です。
――目立ちたいからといって、馬鹿じゃないの。
否定的なものが多い。
そこにアップした本人からのコメントがついていた。
――ミカちゃんのために、何かできないかと思って、うちの子を撮りました。
――そういうの売名行為でしょ。
人それぞれだから、いろんな受け取り方がある。ルールもあってないようなものだ。人々の常識範囲で事が起こっている。でも過激なやり取りが続いているのを見て、優子は複雑だった。
――そこまで責められることかな。別にいいんじゃないの?
また誰かはそれを擁護する。
それがまた気に入らないものが横から出てきて、平気で誹謗中傷が始まり反応が増えていった。
目的からそれてしまうのが優子にとって辛かった。
「ねぇ、ミカはクマちゃんじゃない違う写真を見てどう思う?」
「旅行しているのはお星さまとクマちゃんだから、そのクマのぬいぐるみも二人に会えたらいいね」
ミカはそんなに気にしてない。偽物であっても、友達を紹介されたくらいにしか思わないのだろう。
それにしても当人じゃない人たちで、こんなにも言い合いをするのが怖い。
<いつも写真をありがとうございます。それで小さな子供が見てますので、過激な発言はできたらお控え頂くと幸いです。今後ともミカチャレンジをよろしくお願いします。ミカママより>
後に優子は呟いていた。
優子のタブレットを手にし、スカイツリーをバックにした写真を見てミカは喜んでいた。
「本当に色んなところに行っているね」
「お友達もたくさんできたんだね。色んな人も写ってる。パパにも見せてあげた?」
「もちろん、パパも見てるわよ」
看護師からアドバイスをもらった後、夫の秀則に相談した。ミカが望むなら叶えてやろうと、ミカが寝ている間にクマのぬいぐるみを持ち出して、知り合いに事情を話した後、すぐに事が始まった。
『クマのぬいぐるみが旅行をしています。見かけたら写真を撮って下さい』
ツイッターのアカウントを作り、ミカチャレンジとハッシュタグを作った。
最初は知り合いの友達から友達へと信用が置ける人たちが手渡してクマのぬいぐるみを旅行させてくれた。写真をアップする度、次第にそれは広がってフォロワー数が毎日増えていく。
軌道に乗ってそれはあっという間に広がっていった。
ミカは毎日、アップされる写真を見るのを楽しみにするようになった。
そのお陰で元気が出て、しっかりとご飯を食べ、車椅子で外に出られるようにまでなっていた。
「ミカちゃん、最近とても顔色がよくなって、元気になったね。なんかいいことがあったのかな?」
医者から言われると、ミカは思いっきり笑顔になった。
「先生、あのね、お星さまとクマちゃんが旅行して写真をいっぱい撮ってきてくれるの。ミカそれを見るのがとても楽しいの」
「そうか。それはよかったね」
事情を知っている医者も一緒になって喜んでくれた。
看護師がひらめいたアイデアのお陰で、それがここまで広がって効果がでるとは思わなくて、優子はとても感謝していた。
みんなの善意のお陰で、クマのぬいぐるみは順調に旅行が続いている。
これで活気のある毎日が送れると思っていた時だった。新しくアップされた画像を見てミカは首を傾げる。
「ねぇ、ママ、これ、クマちゃん? ちょっと違うんじゃない?」
ハッシュタグがついているけど、アップされた画像に写るクマはミカのものじゃなかった。色は似ているが、トレードマークの耳のボタンもなく作りが違う。手足が動かないクマのぬいぐるみだった。
流行りものに乗っかって、真似をする人も中にはいる。この場合どうしたらいいのだろうかと優子が戸惑っていると、そういう偽物の情報には誰かが指摘するコメントがついていた。
――これ、偽物ですよね。やめて下さい。ミカちゃんのクマはこんな安物じゃないですよ。
――こんなことしていいと思ってるんですか。ルール違反です。
――目立ちたいからといって、馬鹿じゃないの。
否定的なものが多い。
そこにアップした本人からのコメントがついていた。
――ミカちゃんのために、何かできないかと思って、うちの子を撮りました。
――そういうの売名行為でしょ。
人それぞれだから、いろんな受け取り方がある。ルールもあってないようなものだ。人々の常識範囲で事が起こっている。でも過激なやり取りが続いているのを見て、優子は複雑だった。
――そこまで責められることかな。別にいいんじゃないの?
また誰かはそれを擁護する。
それがまた気に入らないものが横から出てきて、平気で誹謗中傷が始まり反応が増えていった。
目的からそれてしまうのが優子にとって辛かった。
「ねぇ、ミカはクマちゃんじゃない違う写真を見てどう思う?」
「旅行しているのはお星さまとクマちゃんだから、そのクマのぬいぐるみも二人に会えたらいいね」
ミカはそんなに気にしてない。偽物であっても、友達を紹介されたくらいにしか思わないのだろう。
それにしても当人じゃない人たちで、こんなにも言い合いをするのが怖い。
<いつも写真をありがとうございます。それで小さな子供が見てますので、過激な発言はできたらお控え頂くと幸いです。今後ともミカチャレンジをよろしくお願いします。ミカママより>
後に優子は呟いていた。