Aランクダンジョンで巨大サソリを倒した俺達は、また道を進み同じ巨大サソリを三体を倒した。

 さらに道を進んだ先の広場に辿り着く。

「ここが例の広場だね」

 道の脇には崖があったが、ここの広場から崖までは随分と遠い。

 そして、広場には一体の魔物だけが佇んでいる。

「Aランク魔物『ダークドラゴン』…………」

 佇んでいる姿は、遠目からでもその威圧感が凄い。

 まだ戦う訳ではないけど、一目見ておきたかった。

 僕達のパーティーのレベルは、全員まだ8。

 目の前の魔物は、最低でもレベル9から挑戦する事を、推奨されている。

 それでも全滅するパーティーが後を絶たないそうだ。

 レベル9となった冒険者を失うのは、冒険者ギルドからも痛い損害だから、このダンジョンに初めて向かうパーティーには、必ず忠告してくれるという。

 ここまで来たパーティーなら、冒険者ギルドからの忠告を無視するようなパーティーはいない。

 俺達は、一目見て、また道を戻り巨大サソリを乱獲する予定だ。

 ここまでくる間の崖道も、多岐に分散されているので、他のパーティーと鉢合わせになったりはしないはずなので、レベルを上げるのも楽だと予想される。

「あれって飛ぶのかな?」

「ドラゴンって飛ぶと聞いてるけど飛ぶんじゃない?」

「あの巨体で……風圧とか大変そうだね」

「ん~風圧なら、ラビ頼りになりそうだけど、ラビいける?」

「ぷぅー!」

 ラビが敬礼ポーズをする。

 顔も凛々しくて自信ありげだ。

「よし、ではあの『ダークドラゴン』を狙って、暫くレベルを9に上げるのを急務にしよう」

「ソラ」

「ん? どうしたの?」

「先に、ソラの、レベルを、8に、する」

「は、はい……」

 凄い形相でそう話すフィリアに苦笑いしながら、俺達は一度『Aランクダンジョン』を後にする。

 出来れば、このままここでレベルを9に上げたかった…………あのまま有耶無耶にしようとしたのに、フィリアにはお見通しだったようだ。

「ソラ、悪いが俺も正直フィリアに賛成だぞ」

「ん?」

「『ダークドラゴン』……まだルリくん達がいないけど、あれは相当強い。このまま勝てるとは思えないんだよ」

「まあ……確かにそうだけど、レベルを9に上げたら……」

「いや、それだけで倒せるようになるとは、とても思えない。あれを倒す一番の近道は、ソラの次のスキルだと思う」

「俺の、次のスキル……か」

 今の俺のメイン職能『転職士』はレベルが7。

 他は『召喚士』はレベル8で、その他、回復士のレベルが7で、付与術師のレベルが5だ。

 『転職士』はレベル7で大きな力を手にいれたけど、この世界では、レベル5を越えた辺りから、1でものすごい差が広がる。

 予想だけど、レベル7で『ユニオン』というとてつもない力を手に入れたので、レベル8で得られるスキルはそれ以上だと考えたら、またとんでもない事になりそうだ。

 レベル7になってから、一年半。

 もう少しで上がる気がするんだけど、いつ上がるのかは全く分からない。

 レベル6から7でも随分と時間が掛かったのに、7から8は数倍かかると予想されるから……。



 Aランクダンジョンから外に出ると、先程見ていたパーティーがまだ入口前で休んでいた。

 そのパーティーは出て来た俺達の前を防いだ。

「初めまして」

「ど、どうも。初めまして」

 リーダーと思われる男性は、綺麗な金髪で、青色に統一された装備品で身を固めていて、強者の雰囲気をかもし出している。

「失礼だとは思うが、君がソラくんでいいのかな?」

「え? は、はい」

 まさか、クラン名ではなく、名前で呼ばれるとは思わなかった。

「以前、俺達に商談をくれてありがとう。僕はクラン『蒼い獅子』のマスター、ライオットという」

「!? クラン『蒼い獅子』様!?」

「ははは、『様』だなんて、我々は対等な関係だよ。そんなにかしこまらないで欲しいな」

 クラン『蒼い獅子』と言えば、俺達が過ごしたセグリス町――――引いては自由領の土地を多く持っていたクランで、こちらの頼みで、その土地を多く売ってくれたクランだ。

「は、初めまして! 一度お会いしたかったです! クラン『銀朱の蒼穹』のマスター、ソラです」

「ははは、予想はしていたが、本当に若いな! さすが、最年少クランマスターを記録したマスターだね」

「あはは……まさか最年少だとは思わず、でも俺の力というより、仲間の力なんです。俺は一人じゃなにも出来ませんから」

「…………ふむ。いや、全ては君の力だね」

「えっ?」

 エリオットさんは、俺と仲間達をもう一度見渡す。

「みんな、良い目をしている。ここまで導いた『先導者(せんどうしゃ)』がいたからこその顔つきだ。正直言えば、剣聖の彼女以外は、ここに辿り着くのは難しかっただろう。しかし、ここまで導けたのは、『転職士』であるソラくんだからだと思うよ」

 『転職士』は、特殊職能でもハズレ職能として有名だ。

 ライオットさんから『転職士』の名前が出た時、決してそういう感情は伝わってこない。

 帝国でも『転職士』を育てるように、もしかしたら、世界で『転職士』に対する考えが変わって来てるかも知れない。

「ただ、それはソラくんだけでは成せなかったのもまた事実だろう。お互いに良い仲間を持ったね。これからも大切にするといい。僕も自分の仲間達は最も大切な存在だからね」

 ライオットさんの後ろにいる五人の仲間さんも嬉しそうに笑顔を見せてくれる。

 初めて会ったライオットさんは、とても優しい人で、自由領をわざわざ治めていて、家賃を出来るだけ安くしているだけあり、とても好印象な出会いだった。