「ミリシャさん」
「ソラくん。素材は渡して来たのかな?」
「はい。ガイアさん、とても嬉しそうでした」
「ふふっ、鍛冶が大好きなようだね。フィリアちゃんの新しい武器がとても楽しみだね」
「はい。あ、それと一つ相談があるんですけど」
「ん? どうしたの?」
ミリシャさんの前にラビを出した。
「今回活躍してくれたラビの為に、何か出来る事がないかなと思いまして、ミリシャさんなら何か思いつく事ないかなーと……」
「うんうん。ラビちゃんは今回も大活躍だったもんね!」
ミリシャさんが優しく頭を撫でて上げると、ラビも嬉しそうに鳴き声をあげた。
「そう言えば、ソラくんは他の召喚獣はまだ召喚した事がなかったよね?」
「そうですね」
「そっか。じゃあ、召喚獣は一体だけしか契約出来ない事も知っておいた方がいいわね」
「一体だけ……ですか?」
「そうよ。だから召喚士はレベルが上がり、次の召喚魔法を覚えたら下位の召喚獣との契約を切って、上位の召喚獣と新たに契約するのよ?」
「…………なるほど」
ミリシャさんが見透かしたように、教えてくれる。
――――召喚士レベル5で覚える中級召喚魔法。
――――実は、俺は暇がある度に光の精を召喚して経験値を貯めていた。
そして、遂にレベルが8になり、『上級召喚』魔法を獲得したのだ。
本来ならハイオーク戦で使いたかったんだけど、実はあの時はまだレベルが7だった。
つまり、帰り道でレベルが上がったのだ。
何故か俺と結びつきが強いラビはその事を既に察知したらしく、ずっと落ち込んでいた。
「ミリシャさん。もし契約破棄したら、再度契約は行えないんですか?」
「ん~、冒険者ギルドの情報でなら、再契約も出来ると書いてあったわ。恐らく同じ個体だから、契約を解除してもソラくんのラビちゃんはずっとソラくんの中に居ると思ってくれていいかもね」
「……そっか」
「ふふっ、本題はラビちゃんに何か褒美をあげたいのね?」
「はい」
ラビが耳をピクピクさせて興味津々に聞こうとしていた。
「中級召喚と上級召喚で最も違うのは、召喚出来る種族に違いがあるの。例えば上級召喚ではラビちゃんは召喚出来ない。でも既に契約を交わしているラビちゃんと『上級召喚』として契約を結び直せると聞いた情報にあったわ」
「へぇー! じゃあ、ラビが上級召喚の召喚獣になるって事ですか?」
「ええ。ただし」
ミリシャさんは人差し指を立てて、少し困った表情をした。
「元々中級召喚だった召喚獣を上級召喚として契約し直したとしても、通常上級召喚で契約出来るどの召喚獣を越える事は出来ないみたい」
「なるほど…………そうですか、ラビを上級召喚として契約し直すか、新たに契約を結ぶかか~」
チラッとみたラビの顔は笑顔だった。
――――とても寂しそうな笑顔だ。
自分が弱い事を知っているラビは、自分ではない召喚獣の方が俺の役に立てると思ったんだろう。
…………本当に出来た召喚獣だ。
俺は自分の中の『上級召喚』魔法を意識させる。
そして、その魔法について、何となく知る事が出来た。
「そうね。まあ折角覚えた上級召喚だし、使わせて貰いますかね。ラビ。今までありがとう!」
「ぷ、ぷぅ」
少し震える手をあげて、泣きそうな顔になったが、決して笑顔を崩さないラビ。
「では――――――魔法、上級召喚!」
ラビの真下に魔法陣が現れた。
現実を受け止めるしか出来ないラビは、最後まで笑顔で手を振ってくれた。
また会える日まで――――――。
「上級召喚獣、スカイラビット!」
目を瞑ったラビが、驚いて目を開けた。
――「今、なんて言ったの?」と言いそうな表情をしているラビ。
「ラビ。今まで本当にありがとう。君のおかげで俺達はここまで来れたよ。ラビも『銀朱の蒼穹』の一員だよ。俺から出来る事はこうして君を少しでも強くしてあげる事しか出来ないけど、これからも――――」
よろしくねと言いたかったけど、言えなかった。
涙を浮かべたラビが俺の顔に突撃してきたからだ。
「ぷ、ぷ! ぷぅぷぅ!」
興奮したようで、ラビが俺の顔にすりすりしてくる。
温かいラビの体温が伝わって来た。
それにしてもラビって、他の召喚獣というか、俺が聞いている召喚獣と違って感情も豊かだし、思考能力も非常に高いのがとても気になる。
「ん? ソラくん!」
「はい?」
「ラビちゃんの額の宝石の色!」
「ん?」
ラビの額には魔法を使う際に光る宝石のようなものが付いている。
触り心地は意外にも柔らかくて温かかったりする。
元々薄い青色だったその宝石が、綺麗な翡翠色に変わっていた。
「色が変わってますね。翡翠色に変わっていますね」
ミリシャさんはいつの間にか分厚い辞典のような本を開いて何かを探した。
暫く何かを探していたミリシャさんが俺の前に本を差し出した。
「ソラくん。ここ見て? 中級召喚したスカイラビットは召喚で進化させると宝石の色が変わると書いてあるわ。元々は薄い青色。上級召喚に進化させたら濃い青色。超級召喚に進化させたら翡翠色と記入されているわよ!」
「えええええ!? もしかして――――二段階進化した!?」
「もしかして、ソラくんの『転職士』の全て倍になるという効果なのかな?」
それからミリシャさんと憶測を話し合ったが、結果として『転職士』の全てのステータスとスキルが二倍になる効果によるものだろうと結論付けた。
それにしても思考能力が高くなったのも、『転職士』ならではの事なのかも知れない。
新たに強くなったラビは、ずっと嬉しそうに俺とミリシャさんに抱き付いて来た。
「ソラくん。素材は渡して来たのかな?」
「はい。ガイアさん、とても嬉しそうでした」
「ふふっ、鍛冶が大好きなようだね。フィリアちゃんの新しい武器がとても楽しみだね」
「はい。あ、それと一つ相談があるんですけど」
「ん? どうしたの?」
ミリシャさんの前にラビを出した。
「今回活躍してくれたラビの為に、何か出来る事がないかなと思いまして、ミリシャさんなら何か思いつく事ないかなーと……」
「うんうん。ラビちゃんは今回も大活躍だったもんね!」
ミリシャさんが優しく頭を撫でて上げると、ラビも嬉しそうに鳴き声をあげた。
「そう言えば、ソラくんは他の召喚獣はまだ召喚した事がなかったよね?」
「そうですね」
「そっか。じゃあ、召喚獣は一体だけしか契約出来ない事も知っておいた方がいいわね」
「一体だけ……ですか?」
「そうよ。だから召喚士はレベルが上がり、次の召喚魔法を覚えたら下位の召喚獣との契約を切って、上位の召喚獣と新たに契約するのよ?」
「…………なるほど」
ミリシャさんが見透かしたように、教えてくれる。
――――召喚士レベル5で覚える中級召喚魔法。
――――実は、俺は暇がある度に光の精を召喚して経験値を貯めていた。
そして、遂にレベルが8になり、『上級召喚』魔法を獲得したのだ。
本来ならハイオーク戦で使いたかったんだけど、実はあの時はまだレベルが7だった。
つまり、帰り道でレベルが上がったのだ。
何故か俺と結びつきが強いラビはその事を既に察知したらしく、ずっと落ち込んでいた。
「ミリシャさん。もし契約破棄したら、再度契約は行えないんですか?」
「ん~、冒険者ギルドの情報でなら、再契約も出来ると書いてあったわ。恐らく同じ個体だから、契約を解除してもソラくんのラビちゃんはずっとソラくんの中に居ると思ってくれていいかもね」
「……そっか」
「ふふっ、本題はラビちゃんに何か褒美をあげたいのね?」
「はい」
ラビが耳をピクピクさせて興味津々に聞こうとしていた。
「中級召喚と上級召喚で最も違うのは、召喚出来る種族に違いがあるの。例えば上級召喚ではラビちゃんは召喚出来ない。でも既に契約を交わしているラビちゃんと『上級召喚』として契約を結び直せると聞いた情報にあったわ」
「へぇー! じゃあ、ラビが上級召喚の召喚獣になるって事ですか?」
「ええ。ただし」
ミリシャさんは人差し指を立てて、少し困った表情をした。
「元々中級召喚だった召喚獣を上級召喚として契約し直したとしても、通常上級召喚で契約出来るどの召喚獣を越える事は出来ないみたい」
「なるほど…………そうですか、ラビを上級召喚として契約し直すか、新たに契約を結ぶかか~」
チラッとみたラビの顔は笑顔だった。
――――とても寂しそうな笑顔だ。
自分が弱い事を知っているラビは、自分ではない召喚獣の方が俺の役に立てると思ったんだろう。
…………本当に出来た召喚獣だ。
俺は自分の中の『上級召喚』魔法を意識させる。
そして、その魔法について、何となく知る事が出来た。
「そうね。まあ折角覚えた上級召喚だし、使わせて貰いますかね。ラビ。今までありがとう!」
「ぷ、ぷぅ」
少し震える手をあげて、泣きそうな顔になったが、決して笑顔を崩さないラビ。
「では――――――魔法、上級召喚!」
ラビの真下に魔法陣が現れた。
現実を受け止めるしか出来ないラビは、最後まで笑顔で手を振ってくれた。
また会える日まで――――――。
「上級召喚獣、スカイラビット!」
目を瞑ったラビが、驚いて目を開けた。
――「今、なんて言ったの?」と言いそうな表情をしているラビ。
「ラビ。今まで本当にありがとう。君のおかげで俺達はここまで来れたよ。ラビも『銀朱の蒼穹』の一員だよ。俺から出来る事はこうして君を少しでも強くしてあげる事しか出来ないけど、これからも――――」
よろしくねと言いたかったけど、言えなかった。
涙を浮かべたラビが俺の顔に突撃してきたからだ。
「ぷ、ぷ! ぷぅぷぅ!」
興奮したようで、ラビが俺の顔にすりすりしてくる。
温かいラビの体温が伝わって来た。
それにしてもラビって、他の召喚獣というか、俺が聞いている召喚獣と違って感情も豊かだし、思考能力も非常に高いのがとても気になる。
「ん? ソラくん!」
「はい?」
「ラビちゃんの額の宝石の色!」
「ん?」
ラビの額には魔法を使う際に光る宝石のようなものが付いている。
触り心地は意外にも柔らかくて温かかったりする。
元々薄い青色だったその宝石が、綺麗な翡翠色に変わっていた。
「色が変わってますね。翡翠色に変わっていますね」
ミリシャさんはいつの間にか分厚い辞典のような本を開いて何かを探した。
暫く何かを探していたミリシャさんが俺の前に本を差し出した。
「ソラくん。ここ見て? 中級召喚したスカイラビットは召喚で進化させると宝石の色が変わると書いてあるわ。元々は薄い青色。上級召喚に進化させたら濃い青色。超級召喚に進化させたら翡翠色と記入されているわよ!」
「えええええ!? もしかして――――二段階進化した!?」
「もしかして、ソラくんの『転職士』の全て倍になるという効果なのかな?」
それからミリシャさんと憶測を話し合ったが、結果として『転職士』の全てのステータスとスキルが二倍になる効果によるものだろうと結論付けた。
それにしても思考能力が高くなったのも、『転職士』ならではの事なのかも知れない。
新たに強くなったラビは、ずっと嬉しそうに俺とミリシャさんに抱き付いて来た。