冒険者ギルドの全面的な協力により、防衛を気にせずエホイ町に向かった。
『銀朱の蒼穹』の六人と、ゲスロン街から二つのパーティーに参加してくれて、計十八人のメンバーとなった。
二日間馬車を走らせ、エホイ町の近くまでやって来た。
俺は一緒に来てくれたパーティーメンバー達と集まり、作戦会議を始めた。
「さて、ここからが勝負ですね。攻め方としては奇襲が一番良いかなと思います」
「どういう風に奇襲なさいますか?」
「はい。今回こちらのメンバーにローグがいますので、影移動が可能な人達で先に町へ行きます。ただ住民達の安全が最優先なので、まずは住民達を一か所に集めます」
「かしこまりました。こちらにもローグ職がいて、向こうのパーティーにもローグがおります。三人で潜入になりますね」
「はい。では詳しい作戦はこちらのローグに伝えておきましたので、ローグの二人は指示に従ってください」
「「はっ!」」
「では他の皆さんは俺と一緒に正面から奇襲をかけましょう」
「しょ、正面から……ですか?」
「ええ」
両パーティーのメンバーは驚いた。
それもそうだよね……奇襲しようとしてるのに正面から向かったら意味がないからね。
しかし、既にその作戦は考えついているのだ。
イロラ姉さんがローグ二人と共に、影になって森の中に消えていった。
実はこの影移動。
夜より、こういう晴れた場所の方が効きやすい。
更に相手が獣人族という事もあって、音や匂いなどが敏感だという事もあって、夜より晴れたこの時間帯を選んだ。
すぐに両パーティーにそれぞれフィリアとカールが作戦を伝える。
作戦を聞いたそれぞれのパーティーメンバーが笑みを浮かべる。
俺達は馬車に乗り込み、そのままエホイ町の正面に向かった。
◇
エホイ町。
「…………カシア!」
「どうした?」
「……なんか変だ」
「なんか変?」
「ああ」
「……具体的に何が変だ?」
「……具体的にこれというのはないんだが……何者かに見られている感覚だ」
「…………だが何も見えないが」
「そうなんだ。なんか、こう……見えない何者かに見られている感じがする」
「分かった。全員! 完全武装をしろ! 何もなければそれでいい! これから日が落ちるまでは油断するな!」
「「「おー!」」」
カシアの号令に獣人族達が声を上げた。
しかし、それが彼らにとって大きな過ちとなった。
獣人族達が集まり、カシアからの号令を聞き、声をあげるまでの間。
とある影達は素早く町の中に入り込み、住民達の状態を確認していた。
各家を訪れて、指示を出す。
獣人族達が町の外に気を取られている間に、一人また一人、町の一番奥にある町長の家に集まった。
本来なら気づくはずの獣人族だったが、既に一週間ほど何もなかった事と、得体の知れない気配が外から感じられる事に気を取られて、町の中の出来事には目を向けられなかった。
そして、獣人族達にも少し余裕が生まれた頃。
町の上空で小さな爆発が起きた。
獣人族達がその音で上空を見る。
直後、町の正面から本来なかったはずの馬車三台が目の前に現れる。
その馬車はソラの召喚獣であるラビと魔法使いのカール、他の二人の魔法使いの連携魔法により周りの風景を歪める魔法で隠蔽していたのだ。
最上級の魔法でもあるので、ラビはそのまま疲れたかのように、召喚を解いてソラの中に戻って行った。
ソラ達は音を立てることなく、まっすぐ獣人族達に向かって走る。
上空の爆発音のあとに、急に現れた人の匂いに獣人族達があたふたするも、すぐにカシアが「敵襲!! 正面だ!!」と叫んだ。
だが、既にソラ達は目の前に来ている。
いくら獣人族達が身体能力が高いとはいえ、中級職能の高レベルのソラ達に簡単に勝てるはずもなく、そのほかのパーティーも歴戦のパーティーで、獣人族を一人、また一人倒していった。
「全員! ビーストモード解放!」
カシアの声に反応出来た獣人族は、既に半数になったが、獣人族の切り札である身体能力を一時的に上昇させる種族スキル『ビーストモード』を解放した。
みるみる身体が大きくなり、ソラ達の攻撃をしのぎ始めた。
その中でもカシアともう一人の獣人は一際大きい身体つきだった。
「ソラ! リーダーの二人は私が相手する!」
「分かった! 無理はしないで!」
「うん!」
フィリアが双剣を手にかざし、カシア達の前に対峙する。
「…………エルロ。私が先にいく」
「…………分かった」
二人はフィリアの圧倒的な気配に、何かを決意したかのように打ち合わせをする。
「アイアンクロー!」
最初にカシアが仕掛ける。
他の獣人とは一線を画すその速さがフィリアを襲った。
素早く左手で持った剣でカシアを弾き飛ばす。
弾かれたカシアの真後ろから現れたエルロが仕掛ける。
「牙狼撃!」
両手から伸びた爪がフィリアを襲う。
しかし、そのどれもがフィリアに掠る事すら許されなかった。
「獣王迅打!」
エルロが囮になっている間、後方からカシアの必殺技が放たれた。
「剣聖奥義、朧月ノ夜風」
微動だにせず、双剣を振り上げるフィリア。
フィリアが、カシアが、エルロが、風景が、歪む。
一瞬の歪みが元の状態に戻ると、カシアとエルロが血まみれで倒れていた。
フィリアの双剣をそっと鞘に収める美しい姿に、その場にいたすべての者が目を奪われた。
『銀朱の蒼穹』の六人と、ゲスロン街から二つのパーティーに参加してくれて、計十八人のメンバーとなった。
二日間馬車を走らせ、エホイ町の近くまでやって来た。
俺は一緒に来てくれたパーティーメンバー達と集まり、作戦会議を始めた。
「さて、ここからが勝負ですね。攻め方としては奇襲が一番良いかなと思います」
「どういう風に奇襲なさいますか?」
「はい。今回こちらのメンバーにローグがいますので、影移動が可能な人達で先に町へ行きます。ただ住民達の安全が最優先なので、まずは住民達を一か所に集めます」
「かしこまりました。こちらにもローグ職がいて、向こうのパーティーにもローグがおります。三人で潜入になりますね」
「はい。では詳しい作戦はこちらのローグに伝えておきましたので、ローグの二人は指示に従ってください」
「「はっ!」」
「では他の皆さんは俺と一緒に正面から奇襲をかけましょう」
「しょ、正面から……ですか?」
「ええ」
両パーティーのメンバーは驚いた。
それもそうだよね……奇襲しようとしてるのに正面から向かったら意味がないからね。
しかし、既にその作戦は考えついているのだ。
イロラ姉さんがローグ二人と共に、影になって森の中に消えていった。
実はこの影移動。
夜より、こういう晴れた場所の方が効きやすい。
更に相手が獣人族という事もあって、音や匂いなどが敏感だという事もあって、夜より晴れたこの時間帯を選んだ。
すぐに両パーティーにそれぞれフィリアとカールが作戦を伝える。
作戦を聞いたそれぞれのパーティーメンバーが笑みを浮かべる。
俺達は馬車に乗り込み、そのままエホイ町の正面に向かった。
◇
エホイ町。
「…………カシア!」
「どうした?」
「……なんか変だ」
「なんか変?」
「ああ」
「……具体的に何が変だ?」
「……具体的にこれというのはないんだが……何者かに見られている感覚だ」
「…………だが何も見えないが」
「そうなんだ。なんか、こう……見えない何者かに見られている感じがする」
「分かった。全員! 完全武装をしろ! 何もなければそれでいい! これから日が落ちるまでは油断するな!」
「「「おー!」」」
カシアの号令に獣人族達が声を上げた。
しかし、それが彼らにとって大きな過ちとなった。
獣人族達が集まり、カシアからの号令を聞き、声をあげるまでの間。
とある影達は素早く町の中に入り込み、住民達の状態を確認していた。
各家を訪れて、指示を出す。
獣人族達が町の外に気を取られている間に、一人また一人、町の一番奥にある町長の家に集まった。
本来なら気づくはずの獣人族だったが、既に一週間ほど何もなかった事と、得体の知れない気配が外から感じられる事に気を取られて、町の中の出来事には目を向けられなかった。
そして、獣人族達にも少し余裕が生まれた頃。
町の上空で小さな爆発が起きた。
獣人族達がその音で上空を見る。
直後、町の正面から本来なかったはずの馬車三台が目の前に現れる。
その馬車はソラの召喚獣であるラビと魔法使いのカール、他の二人の魔法使いの連携魔法により周りの風景を歪める魔法で隠蔽していたのだ。
最上級の魔法でもあるので、ラビはそのまま疲れたかのように、召喚を解いてソラの中に戻って行った。
ソラ達は音を立てることなく、まっすぐ獣人族達に向かって走る。
上空の爆発音のあとに、急に現れた人の匂いに獣人族達があたふたするも、すぐにカシアが「敵襲!! 正面だ!!」と叫んだ。
だが、既にソラ達は目の前に来ている。
いくら獣人族達が身体能力が高いとはいえ、中級職能の高レベルのソラ達に簡単に勝てるはずもなく、そのほかのパーティーも歴戦のパーティーで、獣人族を一人、また一人倒していった。
「全員! ビーストモード解放!」
カシアの声に反応出来た獣人族は、既に半数になったが、獣人族の切り札である身体能力を一時的に上昇させる種族スキル『ビーストモード』を解放した。
みるみる身体が大きくなり、ソラ達の攻撃をしのぎ始めた。
その中でもカシアともう一人の獣人は一際大きい身体つきだった。
「ソラ! リーダーの二人は私が相手する!」
「分かった! 無理はしないで!」
「うん!」
フィリアが双剣を手にかざし、カシア達の前に対峙する。
「…………エルロ。私が先にいく」
「…………分かった」
二人はフィリアの圧倒的な気配に、何かを決意したかのように打ち合わせをする。
「アイアンクロー!」
最初にカシアが仕掛ける。
他の獣人とは一線を画すその速さがフィリアを襲った。
素早く左手で持った剣でカシアを弾き飛ばす。
弾かれたカシアの真後ろから現れたエルロが仕掛ける。
「牙狼撃!」
両手から伸びた爪がフィリアを襲う。
しかし、そのどれもがフィリアに掠る事すら許されなかった。
「獣王迅打!」
エルロが囮になっている間、後方からカシアの必殺技が放たれた。
「剣聖奥義、朧月ノ夜風」
微動だにせず、双剣を振り上げるフィリア。
フィリアが、カシアが、エルロが、風景が、歪む。
一瞬の歪みが元の状態に戻ると、カシアとエルロが血まみれで倒れていた。
フィリアの双剣をそっと鞘に収める美しい姿に、その場にいたすべての者が目を奪われた。