俺達は地下にある全ての部屋を一つ一つ開けていった。
案の定、中には傷だらけの人ばかりで、扉を開ける度に心の底から怒りが込み上がってきた。
それは俺だけでなく、メンバーも同じ思いで、みんな拳を握りしめていた。
そして、とある部屋を開いた。
「ひぃ!?」
中にはやせ細っている女の子が、倒れている男の子を抱きしめて泣いていた。
俺を見つめた女の子は全身から震え出していた。
「あ、あの……も、申し訳、ご、ございません……る、る、ルイが…………まだ傷が癒えなくて、その……罰なら私が受けますから、ど、どうか、許してください……」
大きな涙を流して嘆願する彼女の姿に俺は言葉が出なかった。
ゲシリアン子爵…………許せない…………。
女の子が抱き締めている男の子は、女の子よりも傷が深く、息も浅いように見えた。
「っ!」
冷静に分析する場合ではなかった。
俺は急いで、自分の職能を『回復士』に変える。
急いで彼の前に行ったのだが……。
「ご、ごめんなさい! ほ、本当にもう厳しいんです! わ、私が全部受けますから! お、お願いします!」
まだ誤解しているようで、俺の前を塞いだ。
全身を震わせて涙を流しながら、訴える彼女に俺も涙を止める事が出来なかった。
俺は、彼女の頭を優しく撫でた。
「大丈夫。俺は君達の味方だよ。決して君達を傷つけたりはしない。その子は急いで治療しないと危ないから、俺に任せてくれないかな?」
俺が撫でようと手を伸ばした時、反射的に身を構えた彼女は、数秒頭を撫でられるまでずっと目を瞑って身構えていた。
俺の声を聞いた彼女は恐る恐る目を開けた。
「ねぇ? 本当に急がないと、その子を助けられないかも知れないから、だからお願い。俺にその子を治させてくれないかな?」
「ほん……とうに? ルリを傷つけない?」
「ああ。約束するよ。絶対に助けてみせる」
彼女は更に大きな涙を流した。
「お、お願いします! な、何でもしますからルリを……ルリを助けてください!」
「ああ! 任せてくれ!」
俺は急いで、男の子の身体に手をかざした。
「ヒーリング!!」
本来なら詠唱を唱えないで省略した場合、威力が半減する魔法だが、俺の転職士の力で二倍の効果を持つ為、詠唱を無視しても本来の威力で魔法が使える。
俺の手から溢れ出る淡い緑色の光が男の子を包んだ。
男の子の傷がみるみる治っていく。
「る、ルリ!! お願い! 私を置いて行かないで!」
女の子の悲痛な声が俺の心にもぐさりと刺さる。
溢れる涙を何とか堪えながら回復を続ける。
男の子の傷が全て癒えた頃、小さく寝息を立てながら眠っている男の子を見て、安堵の吐息を吐いた。
「うん。これなら大丈夫だと思う。あとは安息が必要だから、ゆっくり休ませよう……とその前に」
今度は女の子に回復魔法を使う。
「えっ? わ、私も?」
「ああ。俺は君達の味方だ。だから心配しなくていい。それと、これからはここにいなくても良くなったから」
「えっ? …………私達もう痛くならない?」
「ああ」
「毎日鞭で打たれない?」
「あ、ああ……」
「ご飯とか水も……飲める?」
俺は何も言えず、ただ涙を流し彼女を抱きしめた。
彼女も次第に泣き声をあげ、俺の胸の中で大泣きした。
俺も我慢する事が出来ず、一緒に声を出して泣いてしまった。
暫く一緒に泣いていると、次第に声が小さくなり、女の子は俺の胸の中で眠りについた。
彼女の傷も全て癒えたので、一旦部屋で眠らせて、他の負傷者の回復に回った。
「ソラ……」
「…………フィリア。ごめん。俺…………子爵を許せそうにない」
「…………うん。私も」
俺とフィリアは静かに眠っている男の子と女の子を見つめた。
眠っている時も、自然と身体を丸めて眠る二人に、悲しみと越え、怒りに支配されそうになる。
「ソラくん!! こっちに来て!!」
廊下の奥からアムダ姉さんの声が聞こえた。
急いで向かうと、最後の部屋の中に、短い黒い髪の綺麗な女性がうずくまっていた。
「……ソニアさんですか?」
「……」
女性は名前を言われると少し反応を見せる。
既に目から光を無くした彼女は、少し顔をあげる。
「ソニアさん。ここで何があったかまでは聞きません。ですが、これだけは分かってください。貴方が逃がしたトーマスさんのおかげで、この場所を見つける事が出来て、多くの人々を助ける事が出来ました。それも全てソニアさんのおかげです。だから……どうか自分を誇ってください。貴方が頑張った事を俺達全員が知っていますから」
俺の言葉を聞いていた彼女の目には、段々涙が溢れた。
アムダ姉さんが彼女を抱きしめると、ますます泣き出した。
暫く泣いた彼女を連れ、俺とフィリアで女の子と男の子を出して地下を後にした。
そして、ゲシリアン子爵が待っている屋敷前に向かった。
◇
「ゲシリアン子爵…………私は貴方の事を信用していたのですが……とてもそうは見えませんね」
ゲシリアン子爵邸の前で待っていたゲシリアン子爵に、金髪の男性が残念そうに話した。
「い、いえ! こ、こ、これはなにか誤解が……」
「……あの目を見て、誤魔化せるとでも?」
二人が見つめる先には、怒りに支配されたソラ達が見えていた。
案の定、中には傷だらけの人ばかりで、扉を開ける度に心の底から怒りが込み上がってきた。
それは俺だけでなく、メンバーも同じ思いで、みんな拳を握りしめていた。
そして、とある部屋を開いた。
「ひぃ!?」
中にはやせ細っている女の子が、倒れている男の子を抱きしめて泣いていた。
俺を見つめた女の子は全身から震え出していた。
「あ、あの……も、申し訳、ご、ございません……る、る、ルイが…………まだ傷が癒えなくて、その……罰なら私が受けますから、ど、どうか、許してください……」
大きな涙を流して嘆願する彼女の姿に俺は言葉が出なかった。
ゲシリアン子爵…………許せない…………。
女の子が抱き締めている男の子は、女の子よりも傷が深く、息も浅いように見えた。
「っ!」
冷静に分析する場合ではなかった。
俺は急いで、自分の職能を『回復士』に変える。
急いで彼の前に行ったのだが……。
「ご、ごめんなさい! ほ、本当にもう厳しいんです! わ、私が全部受けますから! お、お願いします!」
まだ誤解しているようで、俺の前を塞いだ。
全身を震わせて涙を流しながら、訴える彼女に俺も涙を止める事が出来なかった。
俺は、彼女の頭を優しく撫でた。
「大丈夫。俺は君達の味方だよ。決して君達を傷つけたりはしない。その子は急いで治療しないと危ないから、俺に任せてくれないかな?」
俺が撫でようと手を伸ばした時、反射的に身を構えた彼女は、数秒頭を撫でられるまでずっと目を瞑って身構えていた。
俺の声を聞いた彼女は恐る恐る目を開けた。
「ねぇ? 本当に急がないと、その子を助けられないかも知れないから、だからお願い。俺にその子を治させてくれないかな?」
「ほん……とうに? ルリを傷つけない?」
「ああ。約束するよ。絶対に助けてみせる」
彼女は更に大きな涙を流した。
「お、お願いします! な、何でもしますからルリを……ルリを助けてください!」
「ああ! 任せてくれ!」
俺は急いで、男の子の身体に手をかざした。
「ヒーリング!!」
本来なら詠唱を唱えないで省略した場合、威力が半減する魔法だが、俺の転職士の力で二倍の効果を持つ為、詠唱を無視しても本来の威力で魔法が使える。
俺の手から溢れ出る淡い緑色の光が男の子を包んだ。
男の子の傷がみるみる治っていく。
「る、ルリ!! お願い! 私を置いて行かないで!」
女の子の悲痛な声が俺の心にもぐさりと刺さる。
溢れる涙を何とか堪えながら回復を続ける。
男の子の傷が全て癒えた頃、小さく寝息を立てながら眠っている男の子を見て、安堵の吐息を吐いた。
「うん。これなら大丈夫だと思う。あとは安息が必要だから、ゆっくり休ませよう……とその前に」
今度は女の子に回復魔法を使う。
「えっ? わ、私も?」
「ああ。俺は君達の味方だ。だから心配しなくていい。それと、これからはここにいなくても良くなったから」
「えっ? …………私達もう痛くならない?」
「ああ」
「毎日鞭で打たれない?」
「あ、ああ……」
「ご飯とか水も……飲める?」
俺は何も言えず、ただ涙を流し彼女を抱きしめた。
彼女も次第に泣き声をあげ、俺の胸の中で大泣きした。
俺も我慢する事が出来ず、一緒に声を出して泣いてしまった。
暫く一緒に泣いていると、次第に声が小さくなり、女の子は俺の胸の中で眠りについた。
彼女の傷も全て癒えたので、一旦部屋で眠らせて、他の負傷者の回復に回った。
「ソラ……」
「…………フィリア。ごめん。俺…………子爵を許せそうにない」
「…………うん。私も」
俺とフィリアは静かに眠っている男の子と女の子を見つめた。
眠っている時も、自然と身体を丸めて眠る二人に、悲しみと越え、怒りに支配されそうになる。
「ソラくん!! こっちに来て!!」
廊下の奥からアムダ姉さんの声が聞こえた。
急いで向かうと、最後の部屋の中に、短い黒い髪の綺麗な女性がうずくまっていた。
「……ソニアさんですか?」
「……」
女性は名前を言われると少し反応を見せる。
既に目から光を無くした彼女は、少し顔をあげる。
「ソニアさん。ここで何があったかまでは聞きません。ですが、これだけは分かってください。貴方が逃がしたトーマスさんのおかげで、この場所を見つける事が出来て、多くの人々を助ける事が出来ました。それも全てソニアさんのおかげです。だから……どうか自分を誇ってください。貴方が頑張った事を俺達全員が知っていますから」
俺の言葉を聞いていた彼女の目には、段々涙が溢れた。
アムダ姉さんが彼女を抱きしめると、ますます泣き出した。
暫く泣いた彼女を連れ、俺とフィリアで女の子と男の子を出して地下を後にした。
そして、ゲシリアン子爵が待っている屋敷前に向かった。
◇
「ゲシリアン子爵…………私は貴方の事を信用していたのですが……とてもそうは見えませんね」
ゲシリアン子爵邸の前で待っていたゲシリアン子爵に、金髪の男性が残念そうに話した。
「い、いえ! こ、こ、これはなにか誤解が……」
「……あの目を見て、誤魔化せるとでも?」
二人が見つめる先には、怒りに支配されたソラ達が見えていた。