「ソラ、いい加減に落ち込むなよ」
「はぁ……お前はいいよな……俺も魔法使いになりたかったよ」
「くっくっ、お前が落ち込むなんて珍しいわ。まぁ……あれは仕方ないよ」
カールは一所懸命に慰めてくれているけど…………
「わりぃな、俺は今から孤児院の先輩達と狩りに行く事になっててよ」
――――これだ。
カールが開花した魔法使いの職能は戦闘職能だ。
だから、孤児院の為にこれから狩りに出かけるのだ。
本来なら……俺も一緒に手伝いたかった。
しかし、俺の開花した職能『転職士』。
それは戦いに全く向いてなければ、支援も出来ない、何なら『転職』すらイマイチ使い道がない。
『転職士』とは、手を触れた相手の『職能』を変更可能な職能だ。
その効果だけなら、凄く使えそうな職能に聞こえるのだが、実情は違う。
制約が多いのだ。
まず、転職出来る職能には限りがある。
職能はその強さでランクがある。
全部で四つの強さに分かれており、それぞれを下級、中級、上級、最上級に分けている。
カールが開花した魔法使いは中級。
フィリアが開花した剣聖は最上級だ。
では話を戻し、俺が転職させられる範囲というのは、下級のみとなる。
しかも、これって中級以上の職能を持った人は転職させられないのだ。
そうなると下級職で違う職業になりたい人か、何もない『無職』の人くらいだ……。
しかし、職能が『無職』の人はそもそも弱いので、転職させる料金も払えないのだ。
そうなると仕事としても成り立たない……そういう事も相まって『転職士』は特殊最上級職能の中でも唯一のハズレという事になるのだ。
俺は孤児院の先輩達と一緒に外に向かうカールを悔しそうに見つめた。
正直言えば、もしかしたらこうなるんじゃないかと不安になっていた。
それが見事に的中したという事だ。
はぁ……。
俺もカールと――――フィリア達と一緒に狩りに出掛けたかった。
『転職士』がどれほど足を引っ張る存在かは知っているつもりだから、我が儘を言って付いて行ったりはしない。
これからは…………普通の仕事をしながら、転職士のレベルを上げよう。
いつか……あいつらと……一緒に…………。
悔しさで涙が溢れた。
◇
ステータス。
心の中で念じる。
――――――――――――――
職能 : 転職士
レベル : 1
スキル : 下級職能転職
――――――――――――――
自分の職能と、その職能のレベル、そしてスキルが心の中で見れる感覚だ。
目に見えている訳ではないんだけど、見える感覚。
このスキル『下級職能転職』というのが、一般下級職能に転職させるスキルだ。
そんなステータスを見ながら、いつも三人で遊んでいた川で一人座って石を投げていた。
その時。
「ソラ!!」
後ろからいつも聞いていた声が聞こえた。
「ん? フィリア??」
向いた場所にはフィリアと、同じ孤児院の先輩二人を連れて来ていた。
「ソラ、こんな所にいたのね。ちょっと試したい事があるの――――――って……もしかして泣いてた?」
「え? ち、ちがっ」
既に目が赤くなっているから、隠そうとしても無理だよね……。
「ソラ、こちらの先輩達ってさ、『無職』なのね? 『転職』お願いしてもいいかな?」
「え? あ、ああ、いいよ?」
「「お願いします!」」
後ろの先輩達も頭を下げた。
俺に出来る事なら、何でもやりたいとは思っている。
「では手を出してください」
まず一人目の先輩が両手を前に出した。
片手でもいいんだけど、まぁいいか。
彼女の両手を握り、スキル『下級職能転職』を発動させる。
「ご希望の職能はありますか? 一般的なモノにしかなれませんが……」
「え! じゃあ、狩人でお願いします」
「分かりました」
彼女の職能を認識する。
ちゃんと『無職』である事が認識される。
『無職』をスキルで書き換える。
選択肢は『戦士』『剣士』『武闘家』『盗賊』『狩人』の計五つだ。
戦士は武器というよりは、ステータス系統が高い職能だ。
剣士は剣に優れた職能で、非常に人気のある職能だ。
武闘家はこの中で一番人気のない職能で、『気功』というのが使えるようになるが、非常に燃費が悪くて武闘家は大成するまで随分と長いと言われている。
盗賊はリアル盗賊とは全然違うモノで、戦いというよりは探索などに役に立つスキルが多いので、こちらも人気の職能だ。
最後の狩人は、言葉通り主に狩りに関する職能で弓や短剣などが使えるようになるが、効果は中級職ほどの強さはなく、中途半端な職能としてあまり人気はない。
彼女の求める『狩人』を『無職』の上に重ねる。
すると、『無職』が消え、『狩人』となる。
彼女の身体から青い光が溢れ出た。
「はい、これで出来ました」
「本当だ!! ありがとう!! これで私も職能持ちになれたわ!!」
彼女の喜ぶ姿を見て、この力を得た事に少しだけ勇気を貰えた気がした。
続いてもう一人の先輩にも同じく『狩人』に変更してあげた。
最初に転職した彼女は茶色の短い髪で活発な見た目のアムダさん。
後に転職した彼女は黒いウェーブが掛かった髪で少し大人しい雰囲気のイロラさん。
この日。
俺が初めて二人を転職させた事で、俺が想像だにしなかった事が起こるなんて、この時の俺は全く知る由もなかった。
ただ一人。
嬉しそうな俺を見つめていたフィリアだけは、この先の出来事を予想出来ていたに違いない。
「はぁ……お前はいいよな……俺も魔法使いになりたかったよ」
「くっくっ、お前が落ち込むなんて珍しいわ。まぁ……あれは仕方ないよ」
カールは一所懸命に慰めてくれているけど…………
「わりぃな、俺は今から孤児院の先輩達と狩りに行く事になっててよ」
――――これだ。
カールが開花した魔法使いの職能は戦闘職能だ。
だから、孤児院の為にこれから狩りに出かけるのだ。
本来なら……俺も一緒に手伝いたかった。
しかし、俺の開花した職能『転職士』。
それは戦いに全く向いてなければ、支援も出来ない、何なら『転職』すらイマイチ使い道がない。
『転職士』とは、手を触れた相手の『職能』を変更可能な職能だ。
その効果だけなら、凄く使えそうな職能に聞こえるのだが、実情は違う。
制約が多いのだ。
まず、転職出来る職能には限りがある。
職能はその強さでランクがある。
全部で四つの強さに分かれており、それぞれを下級、中級、上級、最上級に分けている。
カールが開花した魔法使いは中級。
フィリアが開花した剣聖は最上級だ。
では話を戻し、俺が転職させられる範囲というのは、下級のみとなる。
しかも、これって中級以上の職能を持った人は転職させられないのだ。
そうなると下級職で違う職業になりたい人か、何もない『無職』の人くらいだ……。
しかし、職能が『無職』の人はそもそも弱いので、転職させる料金も払えないのだ。
そうなると仕事としても成り立たない……そういう事も相まって『転職士』は特殊最上級職能の中でも唯一のハズレという事になるのだ。
俺は孤児院の先輩達と一緒に外に向かうカールを悔しそうに見つめた。
正直言えば、もしかしたらこうなるんじゃないかと不安になっていた。
それが見事に的中したという事だ。
はぁ……。
俺もカールと――――フィリア達と一緒に狩りに出掛けたかった。
『転職士』がどれほど足を引っ張る存在かは知っているつもりだから、我が儘を言って付いて行ったりはしない。
これからは…………普通の仕事をしながら、転職士のレベルを上げよう。
いつか……あいつらと……一緒に…………。
悔しさで涙が溢れた。
◇
ステータス。
心の中で念じる。
――――――――――――――
職能 : 転職士
レベル : 1
スキル : 下級職能転職
――――――――――――――
自分の職能と、その職能のレベル、そしてスキルが心の中で見れる感覚だ。
目に見えている訳ではないんだけど、見える感覚。
このスキル『下級職能転職』というのが、一般下級職能に転職させるスキルだ。
そんなステータスを見ながら、いつも三人で遊んでいた川で一人座って石を投げていた。
その時。
「ソラ!!」
後ろからいつも聞いていた声が聞こえた。
「ん? フィリア??」
向いた場所にはフィリアと、同じ孤児院の先輩二人を連れて来ていた。
「ソラ、こんな所にいたのね。ちょっと試したい事があるの――――――って……もしかして泣いてた?」
「え? ち、ちがっ」
既に目が赤くなっているから、隠そうとしても無理だよね……。
「ソラ、こちらの先輩達ってさ、『無職』なのね? 『転職』お願いしてもいいかな?」
「え? あ、ああ、いいよ?」
「「お願いします!」」
後ろの先輩達も頭を下げた。
俺に出来る事なら、何でもやりたいとは思っている。
「では手を出してください」
まず一人目の先輩が両手を前に出した。
片手でもいいんだけど、まぁいいか。
彼女の両手を握り、スキル『下級職能転職』を発動させる。
「ご希望の職能はありますか? 一般的なモノにしかなれませんが……」
「え! じゃあ、狩人でお願いします」
「分かりました」
彼女の職能を認識する。
ちゃんと『無職』である事が認識される。
『無職』をスキルで書き換える。
選択肢は『戦士』『剣士』『武闘家』『盗賊』『狩人』の計五つだ。
戦士は武器というよりは、ステータス系統が高い職能だ。
剣士は剣に優れた職能で、非常に人気のある職能だ。
武闘家はこの中で一番人気のない職能で、『気功』というのが使えるようになるが、非常に燃費が悪くて武闘家は大成するまで随分と長いと言われている。
盗賊はリアル盗賊とは全然違うモノで、戦いというよりは探索などに役に立つスキルが多いので、こちらも人気の職能だ。
最後の狩人は、言葉通り主に狩りに関する職能で弓や短剣などが使えるようになるが、効果は中級職ほどの強さはなく、中途半端な職能としてあまり人気はない。
彼女の求める『狩人』を『無職』の上に重ねる。
すると、『無職』が消え、『狩人』となる。
彼女の身体から青い光が溢れ出た。
「はい、これで出来ました」
「本当だ!! ありがとう!! これで私も職能持ちになれたわ!!」
彼女の喜ぶ姿を見て、この力を得た事に少しだけ勇気を貰えた気がした。
続いてもう一人の先輩にも同じく『狩人』に変更してあげた。
最初に転職した彼女は茶色の短い髪で活発な見た目のアムダさん。
後に転職した彼女は黒いウェーブが掛かった髪で少し大人しい雰囲気のイロラさん。
この日。
俺が初めて二人を転職させた事で、俺が想像だにしなかった事が起こるなんて、この時の俺は全く知る由もなかった。
ただ一人。
嬉しそうな俺を見つめていたフィリアだけは、この先の出来事を予想出来ていたに違いない。