『グレイストール戦争』
※ゼラリオン王国の南で戦っている王様率いる軍は、ゼラリオン王軍と表記。
※ゼラリオン王国の西で戦っているジェローム率いる軍は、ゼラリオン王国軍と表記。
初日、首謀者であるハレイン軍とゼラリオン王軍が衝突し、その日のうちにハレイン軍は全滅し、ハレインも命を落とす。
ゼラリオン王国の西側にある『オルレット領』にてミルダン王国とゼラリオン王国軍が衝突する。
二日目、ゼラリオン王軍はグレイストール領であるシカウンド地域を占領し、この時点で戦争は勝利したものの、帝国の防衛の為、ゼラリオン王軍はそのままシカウンド地域に滞在した。
ゼラリオン王国軍はミルダン王国軍と小競り合いを続けていたが、この日のうちにミルダン王国軍三千が半数を減らし大敗。
三日目、ミルダン王国の全面降伏により、戦争は終結。
十日目、エリア共和国の内通による参戦が発覚、ゼラリオン王国に全面降伏。
『シュルト』の功績。
初日、ハレイン軍の陽動軍を殲滅。
ハレイン軍に大打撃。
ハレインを討ち取る。
二日目、ミルダン王国軍に大打撃。
三日目、エリア共和国の内通証拠提示。
◇
とある森。
「女王陛下~」
玉座に座っている身体が大きい女性が目を開ける。
「アンナ、どうだったんだい?」
「うん~ゼラリオン王国の大勝利~」
「くふふふふ、それもあの子の力かい?」
「そうよ~殆どあの子の力だったよ~」
「くふふふふ、これは面白くなってきたわね~これは飛鳥に一泡吹かせられるかしらね。くふふふふ」
周りの女性達も女王に呼応して楽しそうに笑い始める。
「女王陛下~そろそろ私も混ざりたいよ~」
「くふふ、分かった、アンナの好きなようにしな」
「ほんと!? やった~!」
嬉しそうにぴょんぴょん跳ねるアンナ。
「女王陛下? いつ頃連れてくる?」
「そうじゃな、まずあの少年の力を探ってからさね」
「分かった~! 『鑑定』を教えてもいい?」
「仕方ないわさ、アンナの好きにしな」
「わ~い! 女王陛下大好き~!」
アンナは飛びながら、女王の足に抱き付いた。
◇
帝国宰相執務室。
「宰相閣下、こちらに」
「うむ。ご苦労」
帝国宰相は密偵から一枚の書状を取ると、密偵が消えた執務室で一人、書状を眺める。
「…………!? あのハレインが負けたのか。しかも…………惨敗とはまた…………ゼラリオン王国。これ程までに力を付けたというのか?」
思っていたよりも遥かに悪い結果に、宰相は溜息を吐く。
しかし、その瞳に宿る野心の火は弱まる事はなかった。
◇
とある国の城内。
「女王陛下」
玉座に座っている顔を透明なベールで隠した一人の女性が座っている。
「アインハルト。お久しぶりです」
「はっ、遂に我々の救世主となるお方を見つけられました」
「っ!? それは本当なのですか!?」
驚きのあまり、玉座から立ち上がる女王。
少し興奮気味の女王が目を輝かせてアインハルトを見つめる。
「まだ詳しい事は分かりませんが……あのクランは、色んな制限を無視しております。ここまでの活躍を見た感じ、これからさらなる頭角を現すと考えられます」
「ゼラリオン王国のクランでしたね?」
「はい。その名を――――――――『銀朱の蒼穹』と申します」
「分かりました。ゼラリオン王国は此度戦争が終わったと聞きます。帝国との睨み合いが続くでしょうけど、まだ開戦には時間がかかるでしょう。急いで『銀朱の蒼穹』に連絡を取り、一度こちらに来て頂きましょう」
「はっ、五騎士のセリアに急いで貰います」
「お願いしますね。騎士団長」
「はっ」
騎士団長アインハルトは、ようやく国に帰って来たパーティーメンバーでもあり、王国最強五騎士の一人セリアに書状を持たせ、次の日には『銀朱の蒼穹』に向かわせるのであった。
◇
帝国のとあるダンジョン。
「そっち行ったぞ!」
「任せろ!」
一人の青年が、近づいてきた大きな狼の魔物を斬りつける。
狼魔物は小さく吠え、その場で倒れ込んだ。
「うむ。少しは強くなったな。アース」
「ああ。これもみんなのおかげだ。すまないがこれからも頼む」
「…………言われるまでもない。お前は俺達の希望だ。リース達の為にも強くなるぞ!」
「ああ!」
アースは十人の上級騎士のうち生き残った五人とパーティーを組み、日々ダンジョンでレベル上げと訓練に励んでいた。
自分の所為で負けた戦いで、多くを失った。
その事実が、彼の生きる原動力となり、今ではパーティーメンバーの上級騎士達とも対等に語り合う仲となっている。
全ては、戦えなくなった彼女達の為に。
そして生き残りを掛けた自分の為に。
「アース。向こうの噂は聞いたか?」
「ん? 戦争の件か? 始まったとだけ聞かせてるが……」
「……どうやら、噂によれば、ゼラリオン王国が圧勝したようだ」
「!? ――――ゼラリオン王国が圧勝!?」
「そうらしい。どうやら凄まじい魔法使い部隊を隠し持っていたらしいぜ」
その言葉を聞いたアースの頭に、一つの言葉が思い浮かんだ。
――――――『転職士』。
転職士ならば、職能を簡単に変えられる。
既に自分も誰彼構わずに中級職能に出来る。
一度レベルが1に戻ってしまうが、下級職能を中級職能に上げるのは十二分に魅力的な話だ。
現在、アイザック軍の全ての兵は中級職能について、懸命にレベルを上げている。
その中でも32人だけが、十倍の経験値獲得率を誇っている。
現在パーティーメンバーである五人にその恩恵を与えているので、急速なレベル上げを実現出来ているのだ。
最終的に、帝国最強級のアイザックと一緒にAランクダンジョンでAランク魔物を倒せば、レベル最大も夢ではない。
戦場に現れたという隠し持った戦力。
アースの頭には、どうしても『銀朱の蒼穹』の『転職士』が思い浮かんで離れなかった。
強い魔法使いの部隊…………そんな理想的な戦力がそう簡単に揃うはずもない。
ましてや、帝国でもなくゼラリオン王国という中堅王国でとなれば。
自分より遥か先を行っていると思われる向こうの転職士の更なる闘争心も燃やすアース。
『銀朱の蒼穹』に復讐の為、アース達は日々励み続けるのだった。
※ゼラリオン王国の南で戦っている王様率いる軍は、ゼラリオン王軍と表記。
※ゼラリオン王国の西で戦っているジェローム率いる軍は、ゼラリオン王国軍と表記。
初日、首謀者であるハレイン軍とゼラリオン王軍が衝突し、その日のうちにハレイン軍は全滅し、ハレインも命を落とす。
ゼラリオン王国の西側にある『オルレット領』にてミルダン王国とゼラリオン王国軍が衝突する。
二日目、ゼラリオン王軍はグレイストール領であるシカウンド地域を占領し、この時点で戦争は勝利したものの、帝国の防衛の為、ゼラリオン王軍はそのままシカウンド地域に滞在した。
ゼラリオン王国軍はミルダン王国軍と小競り合いを続けていたが、この日のうちにミルダン王国軍三千が半数を減らし大敗。
三日目、ミルダン王国の全面降伏により、戦争は終結。
十日目、エリア共和国の内通による参戦が発覚、ゼラリオン王国に全面降伏。
『シュルト』の功績。
初日、ハレイン軍の陽動軍を殲滅。
ハレイン軍に大打撃。
ハレインを討ち取る。
二日目、ミルダン王国軍に大打撃。
三日目、エリア共和国の内通証拠提示。
◇
とある森。
「女王陛下~」
玉座に座っている身体が大きい女性が目を開ける。
「アンナ、どうだったんだい?」
「うん~ゼラリオン王国の大勝利~」
「くふふふふ、それもあの子の力かい?」
「そうよ~殆どあの子の力だったよ~」
「くふふふふ、これは面白くなってきたわね~これは飛鳥に一泡吹かせられるかしらね。くふふふふ」
周りの女性達も女王に呼応して楽しそうに笑い始める。
「女王陛下~そろそろ私も混ざりたいよ~」
「くふふ、分かった、アンナの好きなようにしな」
「ほんと!? やった~!」
嬉しそうにぴょんぴょん跳ねるアンナ。
「女王陛下? いつ頃連れてくる?」
「そうじゃな、まずあの少年の力を探ってからさね」
「分かった~! 『鑑定』を教えてもいい?」
「仕方ないわさ、アンナの好きにしな」
「わ~い! 女王陛下大好き~!」
アンナは飛びながら、女王の足に抱き付いた。
◇
帝国宰相執務室。
「宰相閣下、こちらに」
「うむ。ご苦労」
帝国宰相は密偵から一枚の書状を取ると、密偵が消えた執務室で一人、書状を眺める。
「…………!? あのハレインが負けたのか。しかも…………惨敗とはまた…………ゼラリオン王国。これ程までに力を付けたというのか?」
思っていたよりも遥かに悪い結果に、宰相は溜息を吐く。
しかし、その瞳に宿る野心の火は弱まる事はなかった。
◇
とある国の城内。
「女王陛下」
玉座に座っている顔を透明なベールで隠した一人の女性が座っている。
「アインハルト。お久しぶりです」
「はっ、遂に我々の救世主となるお方を見つけられました」
「っ!? それは本当なのですか!?」
驚きのあまり、玉座から立ち上がる女王。
少し興奮気味の女王が目を輝かせてアインハルトを見つめる。
「まだ詳しい事は分かりませんが……あのクランは、色んな制限を無視しております。ここまでの活躍を見た感じ、これからさらなる頭角を現すと考えられます」
「ゼラリオン王国のクランでしたね?」
「はい。その名を――――――――『銀朱の蒼穹』と申します」
「分かりました。ゼラリオン王国は此度戦争が終わったと聞きます。帝国との睨み合いが続くでしょうけど、まだ開戦には時間がかかるでしょう。急いで『銀朱の蒼穹』に連絡を取り、一度こちらに来て頂きましょう」
「はっ、五騎士のセリアに急いで貰います」
「お願いしますね。騎士団長」
「はっ」
騎士団長アインハルトは、ようやく国に帰って来たパーティーメンバーでもあり、王国最強五騎士の一人セリアに書状を持たせ、次の日には『銀朱の蒼穹』に向かわせるのであった。
◇
帝国のとあるダンジョン。
「そっち行ったぞ!」
「任せろ!」
一人の青年が、近づいてきた大きな狼の魔物を斬りつける。
狼魔物は小さく吠え、その場で倒れ込んだ。
「うむ。少しは強くなったな。アース」
「ああ。これもみんなのおかげだ。すまないがこれからも頼む」
「…………言われるまでもない。お前は俺達の希望だ。リース達の為にも強くなるぞ!」
「ああ!」
アースは十人の上級騎士のうち生き残った五人とパーティーを組み、日々ダンジョンでレベル上げと訓練に励んでいた。
自分の所為で負けた戦いで、多くを失った。
その事実が、彼の生きる原動力となり、今ではパーティーメンバーの上級騎士達とも対等に語り合う仲となっている。
全ては、戦えなくなった彼女達の為に。
そして生き残りを掛けた自分の為に。
「アース。向こうの噂は聞いたか?」
「ん? 戦争の件か? 始まったとだけ聞かせてるが……」
「……どうやら、噂によれば、ゼラリオン王国が圧勝したようだ」
「!? ――――ゼラリオン王国が圧勝!?」
「そうらしい。どうやら凄まじい魔法使い部隊を隠し持っていたらしいぜ」
その言葉を聞いたアースの頭に、一つの言葉が思い浮かんだ。
――――――『転職士』。
転職士ならば、職能を簡単に変えられる。
既に自分も誰彼構わずに中級職能に出来る。
一度レベルが1に戻ってしまうが、下級職能を中級職能に上げるのは十二分に魅力的な話だ。
現在、アイザック軍の全ての兵は中級職能について、懸命にレベルを上げている。
その中でも32人だけが、十倍の経験値獲得率を誇っている。
現在パーティーメンバーである五人にその恩恵を与えているので、急速なレベル上げを実現出来ているのだ。
最終的に、帝国最強級のアイザックと一緒にAランクダンジョンでAランク魔物を倒せば、レベル最大も夢ではない。
戦場に現れたという隠し持った戦力。
アースの頭には、どうしても『銀朱の蒼穹』の『転職士』が思い浮かんで離れなかった。
強い魔法使いの部隊…………そんな理想的な戦力がそう簡単に揃うはずもない。
ましてや、帝国でもなくゼラリオン王国という中堅王国でとなれば。
自分より遥か先を行っていると思われる向こうの転職士の更なる闘争心も燃やすアース。
『銀朱の蒼穹』に復讐の為、アース達は日々励み続けるのだった。