声のした方を向く。
 すごく小さな女の子がテーブルの縁に手をかけてつま先立ちをし、ぴょこんと顔だけ覗かせていたのだけど、それが突然テーブルの端から生首が生えてきたように見えて

「うわっ!」

 と叫んでしまった。さらにガタッと椅子を鳴らして座ったまま後ずさってしまった。
 咄嗟に眉をハの字にし、唇をやや食いしばり、ちぢこまったお辞儀をしてか細く弱い声を出す。

「あっ、ごめんなさい……」
「いいですいいです、どうせ誰もいませんし」

 あっけらかんとした答えが返ってきた。どうやら顔と生首を間違えたことではなく、店内で大声を出したことに対して謝ったのだと思われているらしい。まあ当然か。

 そのままつま先立ちをやめ、ぴょこぴょこと椅子の横まで移動してきた(お願いだから最初からその位置で声をかけて)その子は、閉店間際、私に「あ、お姉さんには後でお話があるので、残ってもらっていいですか?」と声をかけた女の子だった。
 くすんだ赤の着物に、黒いおかっぱ頭、両手でしっかり抱きしめたお盆。宝石みたいにキラキラした大きな瞳の、七~十歳くらいの子。この年齢でアルバイトができるわけないから、店主の親戚の子か何かでお手伝いしているんだろう。