私は、走り出した。
開成堂病院に向かって…
学校から1番近いとこ。
そこにいるはずだ。
悠介くんごめんね…
巻き込んで、苦しい思いさせて、
今、どうしてるかな…
もう症状が治まってたらいいけど、どうなんだろう。
早く向かわなければ……
「はぁ…はぁはぁ……」
どれくらい走っただろう。
着いた…
私の目の前には真っ白な建物が立ち塞がっていた。
白いながらモダンなデザイン。最新の医療機器を揃えているこの街1番の大きな病院。
友達のお見舞いとかに来た記憶がある。
ロビーみたいなところを抜け、エレベーターの前に立つ。
どこにいるんだろう…
私の目に小児科という文字が写った。
きっと、そこだ。
なんとなく分かった。
これも神様の感というやつだろうか…?
いや、きっとこれは違う。
私が悠介くんの友達だからだ。
そうに違いない。
上矢印のボタンを押しドアが開くのを待つ。
チャランッ…
なんか独特な音とともにエレベーターの扉が開いた。
中に入って、三階のボタンを押す。
チャランッ…
またあのチャイムが鳴ったと思うと直ぐにドアが開いた。
エレベーターを出るとすぐ横にはナースステーションがあった。
そこには三人の看護師さんがいて、私は一番若くて優しそうな女の人に声をかけた。
「あの、悠介くんのお見舞いに来たんですけど、お部屋はどこですか?」
「あら、悠介くんのお友達?一人?」
そっか、私の年齢じゃ一人で来るのおかしいのか…
「えっと…お母さん今日帰ってくるの遅い日で、まだいないから一人できちゃったんです」
「そっかそっか、お母さん何時に帰ってくるの?」
「七時前くらい」
「答えてくれてありがとね。悠介くんのとこ行こっか」
「はい!」
看護師さんはナースステーションから出てきてこっちだよと手招きしながら歩きだした。
悠介くんの病室はすぐそこだった。
立ち去る前、看護師さんは悠介君はだいぶ回復してるみたいだから安心してねって言ってた。
それを聞いた私は思った以上に自分が心配して緊張していたことが分かった。
トントントン…
三回ドアをノックする
はーいっていう悠介くんの声が聞こえてきた。
よかった…
思ったより元気そう
私はカラカラなる引き戸を引いて中に入った。
「失礼します」
中に入るとベッドに座っている悠介くんと目が合った。
「彩花ちゃん……? 来てくれたの?」
「うん」
「ありがとう」
そういって悠介くんはにっこり笑った。
やっぱりいい子だったな……
謝らなきゃ……
でも、なんであんなこと言ったんだろう?
「悠介くん、ごめんね。苦しかったでしょう?何か入れたとかそういうわけじゃないんだけど、私が全部悪かった」
「いいよ、僕もあんなこと言ってごめん。なんでかって言われたら答えるのすごく恥ずかしいんだけど、彩花ちゃんのことが好きだったんだ。もっと知りたかった。いつもお弁当おいしそうだなって思ってた。食べてみたいと思ったんだ。あんなやり方してごめん。これでも結構反省してる」
びっくりだった。
悠介くんがこんなこと考えていたなんて……
「そうだったの。話してくれてありがとう。そんなこと考えてたなんて全然わからなかった。でも、今の私は悠介くんの気持ちには答えられない。ごめん」
「そうだよね。彩花ちゃんに振られることなんてわかってたよ」
ちがう……そうじゃなくて、
「ちがうの、」
「ちがうの?」
「私はもう悠介くんに会えない。悠介くんだけじゃなくて、誰にも会えない。お母さんの店を継ぐの。この世界の人じゃなくなる」
「え…?」
そう言ってる間にも私の体は消えかかっていた。
もう時間はないらしい。
「悠介くん。ありがとう。私も好きだよ、悠介くんのこと。いつの間にか好きになってたみたい。お母さんの跡を継ぐって心に決めたはずなのに……いま、自分が消えるのがこんなにも辛い。でもね、どうしようもないの。だから、もし、いつか悠介くんがあっちの世界の人に生まれたときは「繋ぎ屋」にいらっしゃい。その時は、きっと一番美味しい唐揚げを食べさせてあげる」
頬に冷たい感覚が流れた。
悠介くんも泣いていた。
「絶対行く。だから、待ってろ。そのお店で、約束だ」
「うん!ありがとう。約束する。じゃあまたね」
「うん。また」
そこで私の記憶は途切れた。
開成堂病院に向かって…
学校から1番近いとこ。
そこにいるはずだ。
悠介くんごめんね…
巻き込んで、苦しい思いさせて、
今、どうしてるかな…
もう症状が治まってたらいいけど、どうなんだろう。
早く向かわなければ……
「はぁ…はぁはぁ……」
どれくらい走っただろう。
着いた…
私の目の前には真っ白な建物が立ち塞がっていた。
白いながらモダンなデザイン。最新の医療機器を揃えているこの街1番の大きな病院。
友達のお見舞いとかに来た記憶がある。
ロビーみたいなところを抜け、エレベーターの前に立つ。
どこにいるんだろう…
私の目に小児科という文字が写った。
きっと、そこだ。
なんとなく分かった。
これも神様の感というやつだろうか…?
いや、きっとこれは違う。
私が悠介くんの友達だからだ。
そうに違いない。
上矢印のボタンを押しドアが開くのを待つ。
チャランッ…
なんか独特な音とともにエレベーターの扉が開いた。
中に入って、三階のボタンを押す。
チャランッ…
またあのチャイムが鳴ったと思うと直ぐにドアが開いた。
エレベーターを出るとすぐ横にはナースステーションがあった。
そこには三人の看護師さんがいて、私は一番若くて優しそうな女の人に声をかけた。
「あの、悠介くんのお見舞いに来たんですけど、お部屋はどこですか?」
「あら、悠介くんのお友達?一人?」
そっか、私の年齢じゃ一人で来るのおかしいのか…
「えっと…お母さん今日帰ってくるの遅い日で、まだいないから一人できちゃったんです」
「そっかそっか、お母さん何時に帰ってくるの?」
「七時前くらい」
「答えてくれてありがとね。悠介くんのとこ行こっか」
「はい!」
看護師さんはナースステーションから出てきてこっちだよと手招きしながら歩きだした。
悠介くんの病室はすぐそこだった。
立ち去る前、看護師さんは悠介君はだいぶ回復してるみたいだから安心してねって言ってた。
それを聞いた私は思った以上に自分が心配して緊張していたことが分かった。
トントントン…
三回ドアをノックする
はーいっていう悠介くんの声が聞こえてきた。
よかった…
思ったより元気そう
私はカラカラなる引き戸を引いて中に入った。
「失礼します」
中に入るとベッドに座っている悠介くんと目が合った。
「彩花ちゃん……? 来てくれたの?」
「うん」
「ありがとう」
そういって悠介くんはにっこり笑った。
やっぱりいい子だったな……
謝らなきゃ……
でも、なんであんなこと言ったんだろう?
「悠介くん、ごめんね。苦しかったでしょう?何か入れたとかそういうわけじゃないんだけど、私が全部悪かった」
「いいよ、僕もあんなこと言ってごめん。なんでかって言われたら答えるのすごく恥ずかしいんだけど、彩花ちゃんのことが好きだったんだ。もっと知りたかった。いつもお弁当おいしそうだなって思ってた。食べてみたいと思ったんだ。あんなやり方してごめん。これでも結構反省してる」
びっくりだった。
悠介くんがこんなこと考えていたなんて……
「そうだったの。話してくれてありがとう。そんなこと考えてたなんて全然わからなかった。でも、今の私は悠介くんの気持ちには答えられない。ごめん」
「そうだよね。彩花ちゃんに振られることなんてわかってたよ」
ちがう……そうじゃなくて、
「ちがうの、」
「ちがうの?」
「私はもう悠介くんに会えない。悠介くんだけじゃなくて、誰にも会えない。お母さんの店を継ぐの。この世界の人じゃなくなる」
「え…?」
そう言ってる間にも私の体は消えかかっていた。
もう時間はないらしい。
「悠介くん。ありがとう。私も好きだよ、悠介くんのこと。いつの間にか好きになってたみたい。お母さんの跡を継ぐって心に決めたはずなのに……いま、自分が消えるのがこんなにも辛い。でもね、どうしようもないの。だから、もし、いつか悠介くんがあっちの世界の人に生まれたときは「繋ぎ屋」にいらっしゃい。その時は、きっと一番美味しい唐揚げを食べさせてあげる」
頬に冷たい感覚が流れた。
悠介くんも泣いていた。
「絶対行く。だから、待ってろ。そのお店で、約束だ」
「うん!ありがとう。約束する。じゃあまたね」
「うん。また」
そこで私の記憶は途切れた。