「えっ?それで木島くんと会うことになったの?」


翌日、咲に伝えると驚いたような反応をした。そうすると、またニマニマし出して、


「へー、私と話したときは会わないって言ってたのに、結局会うことになったんだー」


私を小突いてきた。恥ずかしいのと、少し気まずさも体の中に入ってくる。


「まあ、そうです」

「急に敬語!芽生は恥ずかしいとそうなるよね」

「言わなくていいよ!」


一通り私をからかって満足したのか、真面目な顔をして聞いてきた。


「で、いつどこで会うの?」

「来週の月曜日の放課後に木島くんの高校近くの駅に集合」

「えっ芽生が行くの?」

「うん、あっちの方がお店とかいっぱいあるし、何かといいかなと思って」


ここまで説明しても、なぜか咲は煮え切らない表情だ。何か引っかかる部分でもあったのだろうか。


「でもさあ、彼氏が学校に迎えに来てくれるのって女子の憧れじゃん?」

「え、彼氏!?」


大きな声が出てしまった。ほとんど人がいないとはいえ、流石に迷惑である。そもそも、彼氏なんてパワーワードを急に出さないでほしい。違うよ、と否定すると今度は咲が驚いた顔をした。


「彼氏じゃない!?ありえないって!」

「でも本当なことだし」

「そう思ってんのは芽生だけだよ。意味もなく男子高校生が女子とメッセージのやり取りなんてするわけないでしょ」


憤慨しているようだったけれど、私の言ったことは事実だし。木島くんと私は恋人でもなんでもない。第一私は、一度もあったことのない人に恋できるような性分でもないのだ。

そう伝えると、咲は渋々だが了解したようだった。


「まあ、芽生が言うならそうかもしれないけど、でも可能性がないわけじゃないからね!」


その言葉が家に帰ってきた今でも頭から離れなくてなかなか寝付けないでいる。

私と木島くんが恋人になる。そんな未来が来るのだろうか。今まではメールでのやり取りしかしたことがないわけだし、正直考えられない。

でも、咲が恋してるみたいな表情で、木島くんとのやりとりを見ていたと言われたことを考えると、そうなってもおかしくはないんじゃないかという気もしてくる。

自分の気持ちが見えない。すると、枕元に置いていた
スマホが振動した。見れば、木島くんからのメッセージだった。


――月曜日、どこか行きたいことある?

――駅前にできた新しいカフェに行ってみたいな

――了解。リサーチしておくよ

――ありがとう。じゃあまた月曜日に


やりとりが終わって、過去の履歴を眺めてみた。

学校の友達のこと、面白かった動画の話、登下校の時に見つけたおもしろい猫のこと、どれも日常的なものばかり。

世間一般の恋人たちはこんなやりとりをするのだろうか、どうにも想像がわかない。

私だって恋をしたことぐらい経験としてある。でも今回のことは完全なイレギュラーだ。

そしてモヤモヤした気持ちが消えないまま、あっという間に月曜日がやってきた。