バスの後部座席に並んで座った。
「これさぁ、帰ったらどうなってると思う?」
「私たちの親だもんねぇ……。自分たちが楽しみたいんじゃないの?」
私たち二人のスマホにはそれぞれメッセージが入っていて、内容としては帰ってきたら私の家に集合と言うことだった。
「さっきはごめん。彩花さん恥ずかしかったよね」
「ううん。謙太君こそ大胆だなぁって。でも久しぶりだったね」
「あの姉ちゃんの胸が大きくなってたなぁって」
「もう! そんなこと思ってたの?! 信じらんない!」
「ごめんごめん。でも、凄く安心しちゃった」
「いつでもしてあげる。それで謙太君が落ち着くなら。私は出来ることをするから。そのうちにね……」
二人とも顔を赤らめた。私たちだって高校生だ。今日から恋人になって、気持をもっと育んで、互いに永遠の愛を誓えるようになれば、気持と一緒に身体を重ねることだって、はるか遠いことではないかも知れない。
「まぁ、学校は出ないとね。謙太君だって、大学目指しているんでしょ?」
「うん、そうだね」
「あと、少なくても6年かぁ。その頃は私も社会人になってるのかなぁ」
「長い?」
「うん、でも、いい準備期間だよ。私も謙太君に負けないように頑張るよ。もう指輪も貰っちゃったんだもん。絶対に外さないからね?」
「俺だって男の約束したんだから、彩花姉ちゃんもぜーったい外さないで!」
私の家に着くと、やはり……。
今日の展開を見ていたんだろうか、このお母さんたちは……?
「やっぱり結花の読みが当たったかぁ」
「だって、謙太君見てれば分かるわよ。あ、今日だなって」
私たちを出迎えたそれぞれの両親たち四人は、今日の展開を当てっこしていたというんだから……。
今日のクリスマスイブという私の両親と、私の卒業式の日じゃないかという謙太君のご両親。
もう、それってそれぞれがプロポーズした記念日じゃない!
「間を取ってバレンタインデーとかにすればよかった?」
テーブルの上の料理を見てはっと息を飲んだ。
ケーキやお肉、サラダと一緒に何気なく置かれているメニューの中に、食パンを焼いて具材を挟みこんだクラブハウスサンドイッチが置いてある。
当時のことをいろいろ教わったあとに、お父さんからこっそり聞いていた。どちらかと言えば他のメニューに比べて簡単な料理ではあるものの、これを作るのは本当に特別な日なのだということ。
お父さんとお母さんが学校という枠から外れてした初めてのデート、そしてお父さんからお母さんに告白をして、一緒に手を取りあって歩いていくと決めた日に作ったお弁当のメニューなんだと。
それ以来、お母さんはこれを普段は作らなくなったと聞かされている。
「お母さん……」
「うん?」
お母さんは優しく笑ってくれた。「気付いた?」と言ってくれているようで。
「結花と彩花も、早くごはんにするぞ。腹減った。今日は授業にならなかったから、今日と正月元旦だけは精いっぱい楽しんでこいと言ってきた」
「もぉ、不良講師って親御さんたちからクレーム来ちゃいますよ?」
「でも、高校の頃から小島先生ってそうじゃなかった?」
「うんうん。先生そう言い残して、放課後すぐに結花の病院に行っちゃったんだもん」
そんなこともあったんだ。まだ禁断の関係と言われていたときから、二人の気持ちは繋がっていたんだと。
それを持ち出したら、私たちはもっと大変だ。年齢は両親ほど離れていないけれど、私も現役女子高生。謙太君なんて、まだ1年生だ。
「焦る必要はないわ。ゆっくり二人で気持を育てていけばいいのよ」
「はい。彩花さんを幸せにします!」
「ちょっと、謙太君。それじゃもう結婚の挨拶だよぉ!」
みんなで笑った。
「うんうん。うちの彩花はどっちの親に似たのか……、かなりのはねっ返り娘だからな。苦労するかもしれないが、よろしく頼むぞ?!」
「はいっ!」
少し緊張して返事をした謙太君に、私は笑って頭を下げた。