前を歩いている新城の表情は見えないけれど、その声から依頼人の事を信じている気持ちが感じられる。

「それで、お節介で伝えたあの内容はなんだったの?」
「彼女の悪運を祓う為の方法だよ」
「悪運?」
「お前程じゃないが、あの子も中々に酷い人生を送っていた」
「確かに」

両親の借金返済の為に生活のほとんどをバイト等に費やしている。
家族に恵まれていなかった。
その点は僕と似ていると思う。

「その原因として両親が呪われていた事と、あの偽物霊媒師気取りくそ野郎が家に放った呪術が原因だ」
「まだ根に持っているよね?」

身長を貶された事、根に持っているらしい。

「まぁな。両親が何を仕出かしたか知らないが呪いをかけられていた。人が使う呪いじゃない。原因がわからないが、あれは末代まで祟られる呪いだ。その呪いを完全に祓う事はできないけれど、多少、緩和する事はできる。その方法がタヌキの置物だ」
「置物が?」

二メートルくらいの大きさのタヌキの置物を思い出す。
確かに何か普通の置物と違うような気はしたけれど。

「あれは監視役だ。彼女の素行含めて、呪いを緩和するか状況を見張る監視役。最初に確認した時に気が付いたらあったという話だったからな」
「最後の祠は?」
「簡単だ。あの土地、神様が住んでいるんだよ」
「…………え、神様!?」
「あぁ、名のある神様じゃないが、その力は本物だ。住んでいた婆ちゃんがわかっていたか知らないが、祠を定期的に綺麗にすれば、祟りの緩和に神様も力を貸してくれる」
「お節介だね」
「他人の悪意にさらされていたんだ、少しくらい良い方向にいかないとわりに合わないだろ」

怪異に対して厳しい新城だが、困っている人に対して手を差し伸べるところがある。
そういう面を知っているから僕は彼の力になりたいと思えるのだろう。

「それにしても、新城の偽物がでてくるなんて驚いたね」
「どーでもいい」

偽物が現れたという事はそれだけ新城が有名になっているという事だけれど。
本当にどうでもいいという態度で新城が答える。