「うん、あ、新城」
「あん?」

先を歩き始めた新城に追いつく。

「ありがとう、今回も助かった」
「そうか」
「新城に返さないといけない事がいっぱいあるね」
「ゆっくりでいいから返せ。利子はつけないからな」
「あははは、そうしてくれると助かるかな」

ちらりと新城は僕を一瞥する。

「俺はお前に隠し事がある」
「そう、かもね。でも、待つよ」

新城の言葉に頷く。
きっと、いつか話してくれると信じている。
だから待つ。
それは僕の変わらない気持ちだ。

「いつかは話す。俺の隠している事、この眼帯の事とかな……いつかはお前にやってもらうことがある。手伝ってもらうぞ」
「わかった」
「少しは迷えよ」
「迷わないよ」

呆れる新城に僕は首を振る。

「新城の事なら僕は迷わずに信じられる」
「そうかい、このやり取り何回しただろうな」
「何回でも、僕は迷わずに覚悟を決める」

僕達は人間界へ戻ってきた。
これから文化祭の準備がある。
慌ただしいけれど、元の日常へ戻ってきた。









僕はこの時、わかっていなかった。
元の日常へ戻ってきたと思っていたけれど、既に今までの日常は崩壊に向かっていることを。
新城の隠してきた過去がゆっくりと、確実に足音を立てながら背後に迫っていた事を。
僕はおろか新城も知る由がなかった。